研究課題/領域番号 |
26340070
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高見澤 一裕 岐阜大学, 応用生物科学部, 名誉教授 (00159005)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオサーファクタント / テトラクロロエチレン / 塩素化エチレン / 活性汚泥 / 油膜排除活性 / FT-IR |
研究実績の概要 |
今年度は,新規バイオサーファクタントの精製と構造解析を行った。活性汚泥培養液から遠心とメンブレン膜ろ過により無菌培養上清を得た。既知のバイオサーファクタントの精製方法を参考に,無菌培養上清の酸沈殿,イソプロパノール沈殿,酢酸エチル抽出を行った。しかし,どの画分にもバイオサーファクタント様物質は分画されなかった。また,無菌培養上清を用いて,アルコール塩析と逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)による精製を経て,バイオサーファクタント様物質の精製を行った。バイオサーファクタント様物質の界面活性を原油を用いた油膜排除活性から調べたところ,RP-HPLC の100%メタノールで溶出した画分に,もとの無菌培養上清のおよそ70%の活性が回収された。この活性画分には末端吸収以外に特徴的な吸光(波長200~700 nm)は見られなかったが,コロナ荷電化粒子検出器によって単一ピークとして検出された。このRP-HPLC100%メタノール溶出画分を用いて,バイオサーファクタント様物質のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)で構造推定を行った。100%メタノール溶出画分中には,アルキル基とエーテル結合を有し,アミンやアミド基,エステル基,水酸基,そして二重結合(共役も含む)を有さない物質が存在した。これらの結果から,活性汚泥培養液中に既知のバイオサーファクタントとは異なる,新規のポリアルキルエーテル型のバイオサーファクタントが生産されている可能性が示唆された。また,無菌培養上清の界面活性能を4~37℃の範囲で油膜排除法で調べた結果,4℃で最大の油膜排除(界面)活性を示し,低温環境下でのバイオレメディエーションに効果的である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,培養上清中のバイオサーファクタント様物質の分離精製を行った。培養系の大きさを昨年度の倍にして精製を行ったが,HPLCで精製された画分の乾燥重量は1 mg程度と非常に微量であった。しかしながら,FT-IRで構造推定された結果は,本バイオサーファクタント様物質が新規物質であることを示唆している。また,実際には培養系を10倍以上にして生産を試みたが,生産量が安定しなかった。バイオサーファクタント様物質の詳細な構造解析とその特性評価のためにも,生産量(生産方法)の改善が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
バイオサーファクタント様物質の精製を継続し,その構造をNMRやMSを用いて決定する。得られた精製標品(部分精製標品も含め)を用いて,界面活性作用の特性評価(表面張力や限界ミセル化濃度の測定,異なる温度,pH,塩濃度における界面活性作用の測定など)を行う。また,テトラクロロエチレンの分解効果について検証する。生産量の改善についても,培養条件の検討(温度,基質(既知のバイオサーファクタントの培養には脂肪酸の添加が効果的と報告されている),通気量)を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会発表を中止したため,旅費相当分が残金となった。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として使用する予定である。
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