研究実績の概要 |
3年間の研究期間を通して,新規バイオサーファクタントの構造決定と機能把握に関する基礎的研究を行った。 1年目において,高濃度のテトラクロロエチレン(PCE)に長期間馴養した活性汚泥がPCEを減少させることを明らかとし,さらに、菌体除去後のろ液にもPCE減少活性を見出した。ろ液は熱処理や活性炭処理によってPCE減少活性が消失し,これは生物由来の有機物がPCE減少に関与すると考えられた。また,PCE減少に関与する物質は,限外ろ過による分子量分画から分子量3,000以下の物質であると考えられた。PCEの分解産物は各種GC(FID、MS、TCD等)やイオンクロマトなどでは検出できなかったことから,活性汚泥中のPCE減少活性物質の一つはPCEを分解するのではなく,界面活性剤のようにPCEの水への溶解度を高めるバイオサーファクタント様物質である可能性が考えられた。 2,3年目において,バイオサーファクタント様物質の精製と構造解析を行った。活性汚泥培養液から得た無菌培養上清から,既知のバイオサーファクタントの精製方法で精製を試みたが精製できなかった。逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)等による精製を経て,バイオサーファクタント様物質の精製を行った。バイオサーファクタント様物質の界面活性を原油を用いた油膜排除活性から調べたところ,RP-HPLC後の画分には,もとの培養上清の70%の活性が回収された。このRP-HPLC画分を用いて,バイオサーファクタント様物質のFT-IR,H-NMRで構造推定を行った結果,RP-HPLC後の画分は,アルキル基,エーテル結合を基本骨格とするポリオキシプロピルエーテル様物質の可能性が示唆された。
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