大気中の微量汚染物質の濃度や挙動を予測・評価する大気質動態モデルは、今日の大気環境問題の予測や解決にとって重要なツールとなりつつある。これまでの研究にて、東アジア~日本での大気中PM2.5の質量濃度については、モデルは、おおよそ数10%過小評価をしており、季節や地域によっても差があるものの、有機エアロゾルの質量濃度を大幅に過小評価(~50%)している事が判明している。本研究では、PM2.5質量濃度の過小評価を改善し、PM2.5濃度の予測精度を向上させるために、二次生成有機エアロゾルの前駆物質である非メタン炭化水素の排出量の精度向上と有機物質の揮発性を考慮した粒子モデルの導入をすすめ大気二次粒子のモデル過小評価の改善に取り組んだ。非メタン炭化水素の排出量の精度向上に関しては、気象条件を取り入れた植生起源の排出量推計モデルを導入し、その結果を大気質動態モデルの入力値として利用した。エアロゾルメカニズムに関しては、複数種のメカニズムを利用した夏季1カ月のモデル実験を行なった。その結果、1カ月期間平均では、従来のモデル設定と比較して、有機エアロゾルの増加が確認でき、わずかながらPM2.5の過小評価の改善傾向が見られた。一方、都市域でのPM2.5各成分の日平均濃度データとの比較において、モデル結果が、必ずしも濃度変動を捉えられていない事が判明した。さらに、排出量の感度実験を行なったが、大幅な改善には繋がらなかった。故に、有機エアロゾルのモデル予測精度を向上させるためには、排出量以外の部分、モデルによる有機エアロゾルの生成・変質過程の表現が重要である事が示唆された。
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