研究実績の概要 |
提案者はこれまでに,超高回収量レアメタル捕集材料(平成26年度)と高選択的捕集材料(平成27年度)を開発した.これらは水溶液中での捕集が可能であり,これらに加えて有機合成廃液等の有機溶媒中のレアメタルを捕集する材料を開発できれば,幅広い都市鉱山からのレアメタル捕集が可能となる.そこで本研究では,トリス(2-アミノエチル)アミン(tren)と1,4-ビス(ヘキサフルオロ-α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン(1,4-HFAB)の水素結合による集合体形成を利用した有機溶媒中でのレアメタル捕集を検討した.さらに,有機合成反応後の金属触媒の回収を試みた. 本研究では,汎用性金属触媒である酢酸パラジウムの捕集を検討した.まず,酢酸Pd(II)の1,2-ジクロロベンゼン溶液を70℃に加熱して,集合体を加えた水素結合が切断され均一系となり,10秒撹拌後冷却することで水素結合が再生しPdを捕集した集合体が沈殿物として得られた.沈殿物をろ過により分離し金属捕集率を求めたところ,捕集率は99 %以上であった. 実際の応用例として鈴木カップリング反応後のtren/1,4-HFAB集合体を用いたPd触媒の回収を検討した.酢酸パラジウム触媒存在下,ヨードベンゼンとフェニルボロン酸の反応を1,2-ジクロロベンゼン中80℃で20時間行った.反応終了後,同温にてtren/1,4-HFAB集合体を加えて溶解させ1時間撹拌した後,0℃で2時間冷却し集合体を沈殿させ,ろ過により分離した.原子吸光光度計により捕集率を測定した結果,パラジウム触媒は99%以上捕集できることが分かった.さらに,ろ液を溶媒留去し,残渣を再結晶することで生成物を77 %で単離することができた.このことから本システムは,鈴木カップリング反応におけるPd触媒と生成物を効率的に分離できることが明らかとなった.
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