研究課題/領域番号 |
26340076
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
清野 竜太郎 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90214915)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 膜分離 / 有機溶媒回収 / 多孔質膜 / 複合膜 |
研究実績の概要 |
現在、塗料やインキ産業から排出される廃液には有機溶媒が含まれている場合があり、環境保全の観点から廃液からの有機溶媒回収が必要である。本研究では、0.数MPa程度の低圧でも膜ろ過が可能となるよう、有機溶媒と親和性の高い膜材料を用い、さらに孔形成剤の添加により多孔質化した膜を作製した。低圧での膜ろ過を行い、有機溶媒の透過性や分離性能について考察した。 膜母体には2液硬化型のポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用した。PDMS主剤をn-ヘプタンで希釈した後、孔形成剤としてポリエチレングリコール(PEG、平均分子量200)を質量比でPDMS:PEG = 1:0.2~2となるよう加えかく拌した。硬化剤を加え更にかく拌することでPDMS-PEG溶液を調製した。これをガラス板上に塗布し、加熱・硬化させた。その後、蒸留水に浸漬させPEGを除去し、乾燥して多孔質膜を作製した。比較のため、孔形成剤を加えない緻密PDMS膜も作製した。廃液としては約10 wt%の固体粒子を含有するインキ廃液を用いた。デッドエンド型の膜ろ過装置を用い、廃液に0.2 MPaの圧力を加えて膜ろ過を行い、透過量および透過液中に含まれる固体粒子の濃度を測定した。 PEG含量の増加に伴い、透過量は大きくなった。緻密PDMS膜の透過流束は0.029 kgm-2h-1であったのに対しPDMS:PEG=1:1の膜では0.87 kgm-2h-1であった。透過が確認されるまでの時間は、PEG含量の増加に伴い短くなった。緻密膜では10時間以上かかったのに対し、PDMS:PEG=1:1の膜では10分程度であった。これはPEGの添加により、膜が多孔質化したためではないかと考えられる。また、いずれの膜においても透過液中の固体粒子濃度は約0.5wt%でほぼ透明な液体であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はより高分離性能を有する膜の作製を目指し、個体粒子濃度が10wt%程度のインク等の廃液から低圧膜ろ過により個体粒子濃度が0.5w%以下となる膜作製条件の確立を目指した。孔形成剤としてポリエチレングリコールを(PEG、平均分子量200)用い、これを質量比でPDMS:PEG = 1:0.2~2となるよう加えかく拌、更に硬化剤を加え、これをガラス板上に塗布し、加熱・硬化させ、その後、蒸留水に浸漬させPEGを除去し、乾燥する工程を確立することにより、安定的に多孔質膜を作製することに成功した。デッドエンド型の膜ろ過装置を用い、廃液に0.2 MPaの圧力を加えて膜ろ過を行った結果、安定的に4 kgm-2h-1Pa-1程度の高い透過量が得れた。透過液はほぼ透明で、透過液中の固体粒子濃度は27年度の達成目標に据えた約0.5wt%以下であった。 透過測定後、膜表面に堆積した個体粒子は溶媒による膜洗浄で容易に除去でき、再度の透過測定でも透過量や分離性能の大きな劣化は確認されなかった。このことから、膜の再利用や膜を取り込んだ装置による連続運転も十分可能であることが予想される。さらに膜と支持体を複合化させた膜モジュールの作製にも成功した。 以上の通り、平成27年度に立案した計画事項はほぼ遂行できた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、平成26、27年度の結果をふまえ、最終年度はこれまで同様膜の最適化に取り組むほか、膜モジュールを取り込んだ大量処理装置の設計を目指す。 膜の最適化では、個体粒子濃度が10wt%程度のインク等廃液から、低圧(0.2 MPa程度)膜ろ過により、回収液中の個体粒子濃度が0.1wt%程度となる膜作製条件を確立する。併せて、膜ろ過装置を用いて膜の長期安定性の評価を行う予定である。加えて、作製した膜モジュールを取り込んだ大量処理が可能な装置の設計を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりもわずかに安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成28年度請求額と併せて消耗品費として使用する。
|