カルボニルα位に4級炭素をもつエステル類の水素化反応について、さまざまなルテニウム触媒を用いて脱離アルコールの分子構造が反応性に与える影響を詳細に検討した。遊離ヒドロキシル基をもつ直鎖状エステル類は、一様に基質の消失速度が向上するものの、水素化反応に加えてトランスエステル化が顕著に併発するために選択性が著しく低下することが明らかとなった。一方で環状エステル類は遊離ヒドロキシル基の有無に関わらず水素化反応が高選択的に進行し対応するジオール類を高効率に与えることがわかった。そこで環状エステルを側鎖に含む高分子基質としてα-メチレンブチロラクトンとスチレンの共重合体を種々調製してルテニウム触媒を用いる水素化反応を実施した。その結果、反応溶媒に可溶な高分子基質から、環状エステル部位が還元的に変化した高分子生成物が得られた。本高分子生成物の詳細な分子構造の究明とフィルム化を通じたガスバリア性の評価が今後の課題である。
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