ナノインプリントリソグラフィーという技術は半導体等の微細構造を安価でかつ簡易に作成する技術として非常に有望であるが樹脂が付着し、作成した微細構造に欠陥が生じる問題がある。そこでこれまでにない方法として高静水圧処理を用いたモールドに付着したUV硬化樹脂の効率的除去条件に関する研究を行った。その結果、まず常圧で浸漬することで樹脂を膨潤・軟化させダメージを与える。続いて、加圧保すると樹脂が圧縮され、さらに樹脂とモールドの微細な隙間に洗浄液が侵入する。最後に急速な減圧により、剥ぎ取り効果が生まれ樹脂がモールドから剥ぎ取られる。これらの処理を繰り返し行うことで効率的に樹脂除去できるという除去メカニズムが前年度までに考えられた。本年度はまず常圧・50℃で樹脂をフェノール溶液に浸漬したとどれくらいの時間でダメージを受けるか10時間まで詳細に調べた。その結果、形状、重量変化、硬度ともに約90分までは時間と共に変化するがそれ以上10時間まではほぼ変化が観測されなかった。従って、常圧で浸漬する時間は2時間が妥当であることが示唆された。そこで、①高静水圧処理を行わない常圧浸漬10および20時間処理、②これまで行ってきた常圧浸漬15分間の後に加圧保持5分間の繰り返しを10回、③今回得られた至適条件の常圧浸漬2時間の後に加圧保持5分間を10回の条件でホール、ドット、ラインパターンのモールドに付着したUV硬化樹脂の除去実験を行った。その結果、①の処理で50~60%、②の処理で50~80%、③の処理では86~96%(一部再付着と考えられる樹脂が観測されて100%とはならなかった)の樹脂除去率を示した。従って、全パターンにおいて、③常圧浸漬2時間の後に加圧保持5分間を10回繰り返すことで、非常に効果的に付着樹脂を除去できることが示されたと共に提案した効率的樹脂除去メカニズムが妥当であることが示唆された。
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