研究課題/領域番号 |
26340081
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中川 清晴 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50421409)
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研究分担者 |
小田 廣和 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (30067756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水環境改善 / イオン除去・回収 / 電気二重層吸着 / ナノ炭素材料 / 希薄水溶液 / セシウムイオン / 硬水の軟水化 |
研究実績の概要 |
水資源の開発、確保は地球環境保全にとって重要な問題である。近年の世界的な水不足や水質悪化の進行などにより、水環境の改善や維持がますます困難になってきている。我国で水資源の確保のため、排水基準値は厳しく規制され窒素やリンなどを含む富栄養化原因物質に対する規制、上水道中の鉛イオンなどの健康基準がより一層厳しくなることが予想される。また、近年では福島原発事故による極微量の放射性物セシウムイオンおよびストロンチウムイオンの除去が緊急の課題となっている。その他にも硬水の軟水化も重要な課題である。水中の硬度成分は、熱や濃縮により炭酸やケイ素と結合してスケールを生成し、日常生活においては水道管や住宅の排水管などの劣化を速めたり、洗濯機などの家電の寿命や効率を著しく低下させ、産業界では、ボイラーや熱交換器に付着したスケールが熱交換率を悪化させるなどの問題がある。 従来から、これらの除去対策として、イオン交換、逆浸透膜、活性炭素吸着法などが採用されている。樹脂や吸着剤などの表面と被吸着物質間に作用する分子間引力、静電引力などにより、イオンや有機化合物を選択的に補足する。しかし、廃水中に含まれる鉛、銅、亜鉛、カドミウム、クロム、水銀、砒素などの重金属類の除去、とりわけ希薄水溶液中に存在するppmレベルやそれ以下のセシウム、ストロンチウムなどに対しては、従来法では有効に除去できない課題がある。 本研究ではメソ孔性ナノ炭素材料を合成して電極に用い、従来の物理吸着、イオン交換、膜分離、凝集沈殿法などでは除去が困難な希薄な各種イオンを、電気二重層吸着の原理を適応した除去プロセスで水質の環境改善を目的とする。今年度は化学工学的手法を用いてナノ炭素繊維を合成し、それを電気二重層吸着の電極として使用して硬水の軟水化、セシウムイオン、ストロンチウムイオンなどのppm以下の極微量イオンの除去を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来から使用されているマイクロ孔性活性炭によるイオン除去は、電気二重層吸着において特に希薄溶液中ではマイクロ孔内でのイオンの二重層重なり効果などにより良好な電気二重層が形成できない為、ほとんど無力である。そのため、マイクロ孔性の炭素材料に代わるメソ孔性の新しいナノ炭素材料の開発が急務である。 本研究ではナノ炭素を合成するため、ダイヤモンド表面へNi金属を担持した触媒を調製した。効率的にナノ炭素繊維を合成するため化学工学的手法を用いて横型回転式流動層反応装置を使用して上述の触媒によるエチレンの接触分解を行いメソ孔性炭素繊維の合成を行った。 合成したナノ炭素材料はナノ炭素繊維が球状に高密度に凝集し、メソ孔を有するマリモナノカーボンが得られた。マリモナノカーボンは酸化ダイヤモンドを核にして高い導電性と熱伝導性を持つカーボンナノチューブ(CNT)やナノ炭素繊維(CNF)が放射状に高密度に生成したものである。マリモナノカーボンを電気二重層吸着による希薄溶液中のCsイオン除去実験に電極材として使用したところ、比較試料として一般的に使用されているマイクロ孔性の活性炭よりも、理想的な電気二重層吸着特性を示した。この結果からマリモナノカーボンは希薄溶液中のイオン除去に非常に有効であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果をもとにメソ孔性炭素材料であるマリモナノカーボンを電極に用い、希薄濃度のCs+に加えSr2+、加えて主なスケール成分であるCa2+, Mg2+、そして各種アニオン種に着目し、各種イオンの除去・濃縮実験を行う。吸脱着性能およびメソ孔性炭素電極での吸着挙動の解析を行う。 併せて希薄のCsイオンの除去量の増加を目指す。そのため電極を積層したセルを浸した形でイオンの除去が可能な装置開発を行う。新型装置は電極の有効表面積が大きく、しかも装置を組むのが容易であることを使用条件に開発を進める。 その他の検討事項として、印加電圧・電極層数などの実験条件を確立した後、除去時間の短縮、希薄水溶液からのイオンの除去・濃縮に焦点を置き、ナノ炭素電極の特性を把握しながら研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、消耗品が予定より若干少なかったことがあげられる。また、初年度ということもあり、投稿論文の別刷料や予定していた謝金が発生しなかったこともあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、平成27年度の計画に加えて、学会への参加のための旅費、投稿論文の別刷料、英文校正のための謝金などとして使用することなどを計画している。
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