電気二重層吸着の原理を適応した新規希薄イオンの除去プロセスの開発を目的として新規ナノ炭素材料を合成して電極に用い、従来の物理吸着、イオン交換、膜分離、凝集沈殿法などでは除去が困難な極微量のセシウムイオンの吸着・除去を検討した。 一般的に希薄水溶液中に存在するppmレベルやそれ以下のセシウムに対しては、活性炭などのマイクロ孔性材料は単なる表面へのイオン吸着が支配的であるため有効に除去できない。また、電気二重層吸着においても特に希薄溶液中ではマイクロ孔内でのイオンの二重層重なり効果などにより良好な電気二重層が形成できない。 そこで本研究ではマイクロ孔より大きいメソ孔に着目し、ナノ炭素繊維であるカーボンナノフィラメント(CNF)を高密度で球状にして、繊維間にメソサイズの空隙を持つ炭素材料を合成した。この球状ナノ炭素集合体の合成時に金属担持率を変えることで細孔サイズの制御を試みた。合成した球状ナノ炭素材料を電極に使用し、希薄なセシウムイオンの吸着および脱着の性能評価を行った。 ナノ炭素合成時の触媒量を変えることで6~30nmの範囲でメソ孔を制御したカーボンナノフィラメントの選択合成に成功した。また、各種炭素材料を用いて極めて希薄な0.1mMのCsCl溶液でのCV測定による電気化学特性の評価した結果、マイクロ孔性の活性炭では電気二重層は形成できなかった。一方、およそ30nmのメソ孔をもつ球状ナノ炭素集合体では極めて希薄な条件にもかかわらず良好な電気二重層が形成され、希薄なイオンの除去・濃縮を行うことができた。一般的に水溶液の濃度が希薄になるほど電気二重層における拡散層の厚みは増すとされており、0.1mMの濃度における拡散層の厚みは約30nmであるため、球状ナノ炭素集合体では電気二重層形成に必要な空間を十分に確保できたため、良好な電気二重層を形成することができたと考えられる。
|