研究課題/領域番号 |
26340084
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
今井 昭二 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (50232591)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | PM2.5 / 長距離輸送機構 / 越境大気汚染物質 / 樹氷 / 雪 |
研究実績の概要 |
四国におけるPM2.5年平均濃度に対する相対的寄与率は中国(PRC)が59%、朝鮮半島8%とモデル計算されている.日本の九州と中国地方もほぼ同じ割合である.東アジアの中国からの越境移流の割合が大きい.とくに冬期では、中国の寄与が90%にまで上昇する場合がある.[金谷;環境省環境研究総合推進費2013]寒冷な北東アジア地域では、火力発電や産業用炉に加え暖房による石炭消費が増加する.石炭は、SOxやPb, Cd, As, Hgなどの有害重金属の主要な排出源でもある. 越境大気汚染物質の移流に重要な意味を持つ高度1500m付近での観測には、国内都市部の影響を受けていない山岳の山頂での観測が適している.PM2.5 の冬期越境汚染が社会問題化したが電源がなく厳寒の山岳での大気観測は困難を極める.長い滞留時間と数百から千キロ以上の移動距離をもつ燃焼起源エアロゾルが属する蓄積モード(粒径0.1~2μm)の領域は、雲底下洗浄や乾性沈着によって除去され難いが、雲粒の凝結核になり雲内洗浄されることから冬期降水現象の利用が有効である. 本研究室では、冬期降水現象を利用して越境大気汚染の機構研究のために、発生源に直結する一次生成粒子の石炭フライアッシュの組成分析から中国中北部(華北・遼寧省南部)と中国東北部(瀋陽・吉林省・黒竜江省)に固有の粒子パターンを発見・報告した.[耒見ら:分析化学63,837(2014)]この差違は燃料に起因することから、燃料由来の他の大気汚染物質においても地域特性が観測されると予想された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の試料採取は、記録的な暖冬であったことから高知県大豊町梶ヶ森山頂における定点観測が難しかった。また、全国の遠隔地における雪試料採取においても積雪量と降雪量が極端に少なく大きな障害となった。 全国での試料採取が厳しい状況にあったために、試料数の問題が影響しており、やや遅れ気味である。なお、夏期の降水時には、試料採取数が少なかったことも影響した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度冬に採取した全国の雪試料に加え、平成28年度にはエアロゾル粒子を乾性沈着物として採取することで、冬期のエアロゾル粒子と比較検討できる。また、平成27年度冬期試料は、採取重量を5倍以上に増やすことで、水に不溶性の物質の採取料を増やし、化学分析の精度を上げることなどで、本研究の目的の達成に向けて研究を推進する。 蛍光エックス線分析やエックス線吸収分光分析などによる化学状態分析を可能にすることで、先端的な情報を得ることに挑戦する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2年連続の入院を伴う健康上の理由と気象条件の理由による研究の進捗状況の遅れによって、予算執行が遅れ気味であることが理由である。しかし、順調に研究成果は出つつある。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後は、放射光XAFSや放射光XRFを利用した化学種の解明が喫緊の課題である。また、全国・海外等での雪試料の採取などの実施による使用を計画している。
|