本研究では、越境大気汚染物質の発生地域を特定できる手法の開発やその原理となる論理的根拠を研究することが研究の目的であった。最終年度にあたる今年度は、研究期間全般における調査資料を基にして体系的に結果を解析し、方法論を導くことに注力した。 成果1)降雪中の鉛とカドミウムの含有量は、越境汚染物質の発生域を示す大気の起源と強い相関関係を初めて発見した。この相関関係を利用して日本における標高の高い場所での降雪中の重金属濃度を測定することで大気汚染物質の発生源を解明できる手法が構築された。この理論について、本州全体において採取した降雪試料において立証した。 成果2)降雪に含まれる黒色のスス状の物質の正体は、科学的に証明されていない。一般的に外観としてススと考えられていた。その証拠を蛍光エックス線分析法を利用して捉えた。融解した雪の濾過物中のイオウ元素の蛍光エックス線分析をすることで、有機化合物に含まれたイオウ元素であり、石炭燃焼排出物中の硫黄に酷似していたことがわかった。標高の高い遠隔地における雪中に石炭燃焼排出物が高濃度に含まれていることが初めて立証された。 以上の研究の集大成として学術論文を発表した。
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