研究実績の概要 |
本研究では,水環境におけるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)と薬剤耐性腸球菌の存在実態を調査し,環境中を模擬したin vitro伝達実験から薬剤耐性遺伝子の伝播する可能性を評価した。以下に,平成26年度-28年度に得られた知見をまとめる。 (1) 流入下水と河川流域から単離した全1,200株の菌株から,VREは検出されなかった。しかしながら,バンコマイシンに中度耐性を示す腸球菌は,下水と河川水からそれぞれ,8.4%と2%検出された。 (2) 水環境に分布する腸球菌の大部分は,ヒトのみならず畜産や養魚場で使用される汎用性の高い抗菌薬であるエリスロマイシン,あるいはテトラサイクリンのいずれかに耐性を示した。 (3) 河川の上流から下流の全地点からvanC2/C3保有VREが検出され,河川中に分布する一部のVREは,上流が汚染源となり,下流域に至る広範囲で拡散していた。 (4) in vitro伝達実験を実施した結果,腸球菌が高濃度で集積する条件では,薬剤耐性遺伝子の伝播が確認された。水環境に存在するVREから腸球菌にvanA遺伝子が伝播する可能性は極めて低いと考えられる。 本研究では,水環境中のVREならびに薬剤耐性腸球菌の拡散実態を明らかにし,環境中に存在するVREからの耐性遺伝子の伝播ポテンシャルを定量的に評価した。本研究で得られた知見・情報は,薬剤耐性菌の拡散防止対策の考案に繋がり,人々の生活環境における公衆衛生の向上に大きく貢献できる。
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