研究課題/領域番号 |
26340088
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
茂木 守 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 主任研究員 (10415391)
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研究分担者 |
野尻 喜好 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 担当部長 (70415389)
堀井 勇一 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 主任 (30509534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機フッ素化合物 / PFOS / PFOA / 前駆物質 / 生分解 / 河川水 / 底質 / 製品 |
研究実績の概要 |
河川水-底質系による好気的生分解実験系を用いて、市販の防水スプレーに含まれるテロマーアルコール類(8:2FTOH、10:2FTOH)の生分解生成物をLC/MS/MS及びGC/MSで測定し、それらの生分解挙動を把握した。防水スプレー液をメタノールで希釈し、8:2FTOHと10:2FTOHがそれぞれ233 pmol、60 pmolになるように河川水-底質系に添加したところ、28日目に8:2FTOHの主な分解生成物であるPFOAが152 pmol (8:2FTOH初期量の65%)、10:2FTOHの主な分解生成物であるPFDAが15 pmol (10:2FTOH初期量の25%)生成した。これらのことから、河川環境において、市販品に含まれるテロマーアルコールからPFOA、PFDAなどが生成し、それらの生成速度は「10:2FTOHからPFDA」よりも「8:2FTOHからPFOA」の方が速いと示唆された。 PFOSの前駆物質であるN-EtFOSEについて、同様な実験系を用いた長期生分解試験を試行し、約半年間にわたるPFOS等の生成割合の変化を把握した。本研究と同様な実験系を用いた研究では、初期添加量176 pmolのN-EtFOSEは28日後に3.4 pmolのPFOSに転換したと報告されている。本研究では、初期添加量176 pmolのN-EtFOSEから28、56、84、112、139、168日後にそれぞれ12、32、53、76、96、126 pmolのPFOSが生成した。これは河川環境中の生分解作用によって、PFOSの前駆物質が長い時間をかけて徐々にPFOSに転換することを示唆している。この転換速度から、添加したN-EtFOSEが全てPFOSになる日数は、約280日と計算された。この転換の特徴としては、28日目までにN-EtFOSEの約6割がN-EtFOSAAに変化し、これが時間をかけてPFOSに変化すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10:2FTOHの生分解生成物9物質についてLC/MS/MSによる測定方法を確立した。 8:2FTOHと10:2FTOHを含む市販品について、河川水/底質系を用いた28日間の生分解実験を行い、これらの物質の生分解生成物を前述の方法を用いて測定した。その結果、これらのテロマーアルコール類からPFOAやPFDAが生成することが確認され、市販品中のテロマーアルコール類が河川環境におけるPFOA、PFDA汚染の一因になり得ることが示唆された。 PFOSの前駆物質であるN-EtFOSEについて河川水/底質系を用いた長期生分解実験を試行した。その結果、実験室内照明等による培養系内の光合成で酸素が持続的に供給され、長期間生分解能が維持されることがわかった。176 pmolのN-EtFOSEを添加した系では、PFOSが28日ごとに20~30 pmol増加し、168日後には126 pmolに達した。このことから、河川環境中の生分解作用によって、N-EtFOSEが長い時間をかけて徐々にPFOSに転換することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
埼玉県内で環境基準点を有する35河川38地点の河川水について、PFOS、PFOA及びそれらの前駆物質濃度を調べ、これまでの調査結果と比較することで、環境汚染レベルの推移を把握する。 河川水/底質系を用いた長期生分解実験の試行において、添加したN-EtFOSEが全てPFOSになる日数は約280日と計算されたため、この日数でN-EtFOSEからPFOSへの完全転換が起こるか検証する。 河川水/底質系を用いて、鎖長が異なるテロマーアルコール類の標準品(6:2FTOH、8:2FTOH、10:2FTOH)の生分解実験を同時に行い、フッ化アルキル鎖の長さが生分解に与える影響を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入資材の値引き等により差金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
PFOS、PFOA及びそれらの前駆物質について調査、分析に必要な器具、試薬等を購入する。
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