研究課題/領域番号 |
26340091
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三宅 洋 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (90345801)
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研究分担者 |
森 照貴 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (50600095)
川西 亮太 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 特任助教 (50609279)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生態工学 / 河川生態学 / 群集生態学 / 大規模データ解析 / 物理的攪乱 / 流量レジーム / 河川性底生動物 / 河川性魚類 |
研究実績の概要 |
本年度は,まず,研究実施計画の「(1)多様な水文指標を取り入れた流量解析による流量レジーム変数の算出」を実施した.日本全国2078観測所の流量データを整理・分析し,解析対象を1992-2011年までの20年間,399地点とした.各地点にて流量レジームの5構成要素について計171種類の水文指標を算出し,主成分分析により12の流量レジーム変数を算出した.次に,「(2)流量レジームの改変要因の把握とリファレンス地点の抽出」について予備的な解析を実施し,ダム建設等により著しく流量レジームが改変されている地点を特定するとともに,これら以外をリファレンス地点の候補として抽出した.流量レジーム解析の対象地点および河川水辺の国勢調査の実施地点をGIS上で整理することにより,「(3)流量観測-生物調査地点のマッチング」に関する準備を進めた. (1)で得られた流量レジーム変数をベイジアンクラスターにより分類し,現況の改変流況による「(4)流量レジーム特性による水文地域分類」を実施した.399対象地点は,流量変動の規模,頻度,継続時間,タイミング,変化率により特徴づけられる17の水文学的グループに分類することができた.さらに,河川水辺の国勢調査の魚類・底生動物に関するデータについて,「(5)生物データの整理と群集変数の算出」を進めている. (1),(2)および(4)の大規模流量レジーム解析は世界的に導入が進められているものの,国内では実施例が無い.今後,(3)および(5)の結果と統合して,「(6)流量レジーム-底生動物・魚類群集関係の解析」を実施することにより,生態系保全を目的とした流量管理手法に応用可能な具体的情報を提供する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に平成26年度の実施を計画していた,「(1)多様な水文指標を取り入れた流量解析による流量レジーム変数の算出」を完了した.データ整理から主成分分析までの一連の解析手法を確立したため,将来的に解析結果の見直しが必要になった際にも短時間で再解析を行うことが可能になった.「(2)流量レジームの改変要因の把握とリファレンス地点の抽出」については完了には至らなかったものの,予備的な解析と今後の解析に必要な地理情報データの整備が完了している.「(3)流量観測-生物調査地点のマッチング」についてもGIS上での整理を完了しており,近日中に作業が完了する予定である. これらの成果に加え,申請時に平成27-28年度での実施を想定していた「(4)流量レジーム特性による水文地域分類」に既に取り組んでおり,一部の成果を既に得ている.また,「(5)生物データの整理と群集変数の算出」についても,魚類・底生動物分布のデータセットの整備がほぼ完了している. 以上の成果に関連する内容の一部は,既に1編の雑誌論文および8件の学会発表(内,海外1件)として公表している. これらを総合すると,本年度は,申請時の研究目的のうち,流量レジーム解析に関する約半分の作業と,河川生物データ解析を進行させるベースとなる作業とを完了させているため,達成度は「概ね順調に進行している」と評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,まず,地理情報データの整備および解析を進めることにより,「(2)流量レジームの改変要因の把握とリファレンス地点の抽出」を完了させる.平成27年度より,地理情報解析を含む大規模データ解析の経験が豊富な研究者を新たに研究分担者に加えることにより作業の高速化を図る.同様に,「(3)流量観測-生物調査地点のマッチング」についてもGIS上での作業を加速させるとことにより完了させる. 「(4)流量レジーム特性による水文地域分類」については,平成26年度に確立した手法を応用して平成27年度中に解析を終える予定である.「(5)生物データの整理と群集変数の算出」についても,平成26年度に整備したデータセットを利用して早期に群集変数の算出を行う.これらの解析結果を総合して,「(6)流量レジーム-底生動物・魚類群集関係の解析」を随時進め,申請時の研究目的の達成を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者・三宅の繰越金42,622円は主に人件費の節約によるものである(予算:400,000円,支出:303,066円).購入した高性能パソコンにより予想以上に高速のデータ整理・解析が可能になったため,計画していた作業が想定よりも少額の人件費で完了した. 分担研究者・川西の繰越金116,300円については主に物品費の余剰によるものである(予算:100,000円,支出:1,100円).データ処理に際して必要になるパソコン関係消耗品の購入による支出を当初は予定していたが,計画していた作業が新規物品なしに完了可能であることが明らかになったため購入を差し控えた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者・三宅の繰越金42,622円は,主にパソコン関係の物品費に充て,作業のさらなる効率化を図る.分担研究者・川西の繰越金116,300円については主に国内旅費に充て,研究組織内の情報共有,最新の学術情報の収集,成果の発信を促進させる.
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