研究実績の概要 |
大阪南港野鳥園北池塩性湿地で高水温期に現地調査を行い、堆積物表面でのCO2吸排出特性を明らかにするとともに本湿地の総吸排出量を試算した。堆積物によるCO2吸収フラックスは堆積物温度、Chl.a量、光量子量と強い関連性があり、また、排出フラックスは堆積物温度と地下水位に依存して変化した。塩性湿地のCO2排出量の推定においては地下水位との関係が重要で、地下水位を考慮しない推定では2014年5月から9月の排出量が約29 tとなり、考慮した場合に比べて約2.1倍過大評価されることが判った。これらの関係を用いて北池塩性湿地全体(約43100m2)の吸排出量を試算した結果、 2014年5-9月の二酸化炭素吸収量は約23t、排出量は約14tであり、実質約9tのCO2が吸収され、高水温期の本湿地はCO2のSinkとして機能していることが示唆された。 一方、大阪南港野鳥園人工塩性湿地北池の表層堆積物(0-5cm)について有機物分解特性を調べたところ、冠水・干出状況によって異なり、潮間帯堆積物は46-77 % が難分解性であるのに対して潮下帯では93-98 %が難分解性有機物として貯留されることがわかった。さらに、大阪南港野鳥園人工塩性湿地北池(約4ha)における表層堆積物中(0-5cm層)の炭素貯留量を概算したところ、潮間帯で9.5トン、潮下帯では27.6 トン、北池全体で37.1 トン貯留されていると推定された。最終年度の2016年にはこれらの結果を取りまとめ、Ecological Engineering, The Journal of Ecosystem Restorationに成果を記載した。なお、公表した潮間帯堆積物の難分解性に関する論文は平成28年度土木学会海岸工学論文奨励賞を受賞し、また、塩性湿地におけるCO2の吸排出に関する論文は同年度の土木学会論文賞候補に推薦された。
|