研究課題/領域番号 |
26340094
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
岩崎 敬二 奈良大学, 教養部, 教授 (60278877)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 外来海洋生物 / 島嶼 / ムラサキイガイ / タテジマフジツボ / アメリカフジツボ / ヨーロッパフジツボ / 隠岐諸島 / 琉球列島 |
研究実績の概要 |
本年度は、隠岐諸島の島後、中ノ島、西ノ島、知夫里島の4島、薩南諸島の種子島、屋久島、口永良部島の3島、琉球列島の沖縄島およびその周辺の伊平屋島、野甫島、久米島の4島、琉球列島最南部、先島諸島の石垣島、西表島、黒島、波照間島、与那国島の5島、合計16島の港湾と周辺海岸で外来海洋生物の分布調査を行った。なお、この16島のうちこれまでに外来海洋生物の分布が報告されていたのは、島後(ムラサキイガイ、タテジマフジツボ、アメリカフジツボ)、屋久島(ムラサキイガイ)、沖縄島(タテジマフジツボ、アメリカフジツボ、ズージャンフジツボ)のみである。 隠岐諸島では、ムラサキイガイ(島後、中ノ島、西ノ島、知夫里島)、タテジマフジツボ(島後、中ノ島、西ノ島)、アメリカフジツボ(島後、中ノ島、西ノ島)、ヨーロッパフジツボ(島後)の4種が発見され、島後でのヨーロッパフジツボ、中ノ島と西ノ島でのムラサキイガイ・タテジマフジツボ・アメリカフジツボ、知夫里島でのムラサキイガイの発見は、いずれも初記録であった。 薩南諸島の口永良部島では外来種は発見されなかったが、種子島ではムラサキイガイ、タテジマフジツボ、アメリカフジツボの3種が、屋久島ではタテジマフジツボのみが発見された。2島のいずれの種も、初発見であった。 沖縄島とその周辺の3島では、全ての島でタテジマフジツボのみが発見されたが、伊平屋島、野甫島、久米島での発見は初記録であった。先島諸島の5島では、波照間島では1種も発見されなかったが、残りの4島ではタテジマフジツボのみが発見された。この種の4島での発見は、全て、初記録である。 私の調査以前に外来海洋生物の分布記録があったのは、隠岐諸島の島後、屋久島、沖縄島という比較的人口の多い大きな島だけであったが、私の調査では、人口も面積も比較的小さな島であっても、少なくとも1種の外来生物が分布していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、3年目が終了して日本の海洋島の4分の3を本年度までに調査できており、残りの1年で残る4分の1の島嶼を調査できるものと思われる。さらに、これまで外来海洋生物の分布報告がなかった規模の小さな島々にも少なくとも1種以上の外来種が分布しており、日本の島嶼での外来種の分布拡大は、予想以上に進行していることも確認できた。ただし、予算と時間の不足から、船舶に付着している外来生物を調べるための船体付着生物調査を今年度も行うことができなかった。これらの点から、「当初の計画以上に進展している」とは言いがたいが「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には、日本の海洋島の残る4分の1に相当する、トカラ列島(4島)、奄美群島(3島)、小笠原諸島(3島)での分布調査を行う予定である。その後、4年間に調べた合計約50島での外来生物各種の分布の有無から、種毎の分布に影響を与える要因(各島の面積、海岸長、緯度、経度、最高の標高、人口、本土主要港からの距離、在来種数、各港湾の船舶往来量、月平均最高海水温、月平均最低海水温、ステッピングストーンの有無の12要因)を統計解析によって分析し、考察する。また、各島での外来生物の種数を目的変数、各島の上記の属性(12要因)を説明変数とした多変量解析を行い、外来種数の多少に影響を及ぼす要因を、日本海と太平洋の2つの海域に分けて考察する予定である。 以上の分析から、島嶼における外来海洋生物の各種の分布に影響を与える要因と外来種数の多寡に影響を与える要因を総合的に考察し、未侵入の島への種毎の侵入防止策やこれ以上の分布拡大を防止するための効果的な予防策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
この研究は、従来、分布記録がなかった海洋島での外来海洋生物の分布を調査することを主目的としており、経費はもっぱら旅費として使用している。25,000円程度の残額では、遠隔地にある海洋島への旅費として使うことができなかったため、翌年度に1つでも多くの島で調査できるよう、翌年度の経費とまとめて使用するため、意図的に未使用のままとした。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度には、1つでも多くの島で調査できるよう、旅費として使用する予定である。
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