沖縄島北部(国頭)と南部(糸満)でハブをそれぞれ3匹ずつ駆除捕獲し、沖縄県衛生研究所にて馴化飼育しながら定期的に採毒を行った。約7 ml/匹を採毒した段階で、ヘビを麻酔死させ、毒腺と肝臓を採取した。採取した臓器は液体培地で凍結させて冷凍宅急便で大学へ送った。毒腺よりcDNAライブラリーを作成し、毒PLA2をコードするcDNAを網羅的にスクリーニングして塩基配列を解読したところ、オーソドックスな溶血性・中性[Asp49]PLA2と浮腫誘導性・塩基性[Asp49]PLA2および神経毒性・高塩基性[Asp49]PLA2に加えて、中性[Asp49]PLA2の2残基置換サブタイプを見出した。中性[Asp49]PLA2はクサリヘビでは遺伝子同士を比較しても数個の同義置換が見出される程度の非常に保存度が高いアイソザイムであり、サブタイプはこれまでに報告がなかった。一方、各粗毒はゲル濾過で分画し、さらに中分子量画分を陽イオン交換クロマトグラフィーで分画した。中性領域のピークパターンがそれぞれの地域で特異的だったので、これらのピークタンパク質を逆相HPLCにてさらに詳細に分画し、国頭、糸満ハブ毒で固有のretention timeを示すピークタンパク質を5本見出した。注目する標的は先述の中性[Asp49]PLA2サブタイプとして、これらのnativeタンパク質及び酵素断片のN末端アミノ酸配列を解読することで全アミノ酸配列を決定することを予定していたが、地震によるアミノ酸シークエンサーの損傷補修などで当該年度はアミノ酸配列解読が全くできなかった。並行してマススペクトロメトリーによる質量分析も予定していたが、こちらも同じく地震により補修が必要な状態だった。今後、修理が終了次第、各タンパク質の解読を進めるとともに、当該毒タンパク質をコードするゲノムDNAの構造解析をすすめていく。
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