研究課題/領域番号 |
26340098
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
橋本 誠司 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (30331987)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 振動発電 / 多軸・多モード振動 / セルフパワードシステム |
研究実績の概要 |
本課題では,セルフパワード電源供給のための高効率振動エネルギー回生システムの開発と,その産業分野への応用を目的としている。この目的に対し今年度は,振動エネルギー回生装置の制御技術に関する開発を中心に,以下の項目を実施した。 ① 衝撃モードを利用した広帯域振動発電構造の開発:従来の曲げモードの発電に対し,衝撃モードを利用し発電周波数の広帯域化を図るとともに,回生される電力の向上を図った。ここでは,提案構造の物理パラメータが発電に与える影響の定量的解析,間接的衝撃構造を用いた回生エネルギーの最大化,高効率電力変換のためのパワーマネージメントシステムの検討である。本開発では,最大100Hzの帯域にわたり,数十ミリワット(mW)レベルの発電が可能となることを検証した。 ② 多軸・多モード振動エネルギー回生装置の高出力化:前年度に試作した均一応力分布となる三角形状の圧電デバイスを応用し,多軸・多モードデバイスを製作した。これにより,装置自身への入力エネルギーの増大,発電効率の向上を図った。また,開発した装置により駆動される各種負荷を模擬可能な電子負荷試験システムを構築した。自動車振動による負荷試験では,開発した多軸・多モードデバイスが間欠的ではあるがワイヤレス送信用の電源として使用可能であることを検証した。 ③ 振動エネルギー回生装置の高耐久化:エネルギー回生装置の耐久性評価とそれによる耐久性向上を目的に,実際に使用する三角形状の圧電デバイスに対し,動的疲労試験を行った。実験的にえられた疲労限度に対し,応用対象である自動車振動の最大荷重は約45%相当であり,実用化可能なレベルであることを検証した。 以上の研究成果を,Journal論文(3編),国内外の学会(7件)にて発表した。また,関連技術を特許出願中(3件)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標の一つとして,振動発電デバイス単体で100mWの出力を目標としている。これに対し,今年度は衝撃を利用することにより数十ミリワットの出力をえたが,まだ若干不足している。しかし提案構造では,発電可能な周波数帯域が約100Hzと広く,当初予定の帯域幅を大幅に上回っており,実用化においての効果は高い。また,多軸・多モードエネルギー回生装置における高出力化においては,間欠的ではあるがワイヤレス送信が可能なレベルに到達しており,使用するデバイスも自動車振動に対し,十分な耐久性を有することを定量的に検証した。よって,研究進捗としては,おおむね順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
目標出力100mWを目指して,間接衝撃構造の最適化や多点衝撃構造の導入など更なる構造の見直しを実施していく。また,予定している「振動エネルギー回生装置の応用技術」として,提案する発電装置に適合するパワーマネージメントシステムの設計・評価の実施,振動発電装置と一体型とした自己完結型のセルフパワードシステムの構築,さらには出力密度に着目した小型・軽量・省スペース化を実施する。ここでは,自動車,産業,介護分野での市場性,動向を反映し,その実応用・製品化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究費は,一部次年度に繰り越したが,ほぼ予定通りに使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算も加味し平成28年度は,パワーマネージメントシステムの設計,構築に関連する多機能電子負荷装置や電子部品,圧電デバイス,また発電装置とパワーマネージメントシステムを小型パッケージ化したセルフパワードシステムの製作に伴う予算を予定している。
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