鎖状飽和炭化水素であるアルカンは原油の主成分で、理想的な原油系燃料である。本研究の目的は、CO2を原料に太陽エネルギーを用いてアルカン系炭化水素を高生産できる細菌株を開発することであった。本研究で、この目的のために必要であったアルカン系炭化水素を高生産させる新規遺伝子の取得に成功した。そして、この遺伝子を大腸菌で上手く発現させることで、アルカン系炭化水素を高生産できる高増殖性細菌(大腸菌)の開発に成功した。 最終年度では、大腸菌でのアルカン系炭化水素のさらなる高生産をめざして、アルカン系炭化水素を高生産させる遺伝子のプロモーターを検討し(T7プロモーターに付け替えるなど)、また培養条件(遺伝子発現の誘導剤の添加時期や、菌体が高生産する増殖時期など)の検討も昨年に引き続きおこなった。また、アルカン系炭化水素が(溶菌などにより)培地中で検出されるかどうかの実験もおこなった。また、アルカン系炭化水素のより簡易な抽出方法の検討もおこなった。 また、アルカン系炭化水素を高生産させる遺伝子の周辺遺伝子の機能を解析する実験もおこなった。この機能として、塩基配列の相似性から、アルカン系炭化水素を基質にする酵素やアルカン系炭化水素の前駆体を生産する酵素をコードすると考えられた。この実験では、この周辺遺伝子の大腸菌での発現に最適なプロモーターを検討したり、遺伝子が由来したもとの菌に基質を添加したりして、遺伝子の機能を検出することを試みた。このことと関連して、もとの菌により生産される別種のアルカン系炭化水素の生産(昨年発見)の追試験もおこなった。 本研究で開発された細菌は、バイオマスをエネルギー源として利用できることから、間接的にCO2を原料に太陽エネルギーを用いてアルカン系燃料を高生産できる。今後は、本研究成果を用いて、直接的な高生産も試みる予定である。
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