研究課題/領域番号 |
26340104
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
大西 暁生 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (90435537)
|
研究分担者 |
谷川 寛樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90304188)
奥岡 桂次郎 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (90714436)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 物質循環システム / 木質系廃棄物 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、木質系廃棄物に関する建築物、家庭系・事務系に関わる政策や利用段階における事例等を調査した。次に、名古屋都市圏において、廃棄物の現状及び再利用の実態等を把握することで、その有効利用のあり方について考察した。さらに、名古屋市とその周辺地域における社会経済の状況、建築物の情報、家庭系や事業系の木質系廃棄物の状況等を統計書類や地理情報システム、またリモートセンシング等を用いることによって整備した。さらに、解体される木造建築物の品質別(部位別)解体時の原単位を作成するための基礎的な情報を整備した。我々は、すでに名古屋市の社会経済状況を考慮した将来の建築物需要を時空間において詳細に推計するシミュレーションモデルを開発してきた。このモデルを名古屋都市圏に拡張する方法を吟味した。また、市町村レベルではあるものの、名古屋都市圏全域を対象とした建設系排出物の地域循環圏の検討を行った。これらの研究に加え、都市圏内における山林や都市内の緑地の状況等を衛星画像によって高精度且つ詳細に把握するための手法を検討した。さらに、家庭における木材家具の所有状況等を把握するため、アンケートを作成し試験的に実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初年度の実施内容にあげた内容について概ね研究を進めることができた。とりわけ、次年度以降の研究に必要となる基礎的な情報の収集・整備を概ね終えた。また、シミュレーションモデルの検討やアンケート調査も実施可能な段階まで達しており、来年度の実施後には着実な成果が見込まれる。 本年度は、査読付き論文が2件、学会発表が7件となっており、着実に成果が出ている。来年度以降も、さらに研究成果が出るように、研究発表等を積極的に行っていきたい。 ただし、例えば製材所等からの木くずや公園や街路樹等の剪定状況については関係部署にヒアリングする必要がある。そのため、これについては今後検討する必要がある。また、製造業等の木質パレットの使用状況等を調査するため、ヒアリングやアンケートといった具体的な手法を検討する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度に整備した情報を踏まえ、実際に解体される木造建築物の品質別(部位別)解体時の原単位を作成する。とりわけ、住宅の柱や梁のような高品位な廃材から釘等を含んだ壁材、また接着剤、ペンキ、薬剤が付着している低品位の廃材があるため、これらを部位別及び資材別によって把握することによって、廃棄段階と使用段階の組み合わせに応じて再利用の物質フローを分類する必要がある。さらに、廃棄時の品質に応じて、木材はある製品から別の製品や部品等へとカスケード的に再利用されていき、低品位のものはサーマルリサイクルや発電といった最終段階の利用を経る。そのため、質の高いリサイクルから低いリサイクルといったカスケード的物質フローを決定する必要がある。これには、建築物からの廃材だけではなく、間伐材や剪定された樹木、また家庭系・事業系の木質系廃棄物についてもその品質を把握・分類する。 他方、本年度検討してきた建築物需要モデルに加え、建築物の耐用年数を考慮した建替え・解体等のライフサイクルを表すモデルを構築することで将来の世帯数や構成また経済状況に合わせてどの程度の建築物が必要になるかを考慮しながら需給のバランスをとる必要がある。さらに、将来想定される様々な社会経済状況や経済成長、また産業構造等のシナリオを作成する。また、今後考え得る住宅や都市の政策を考慮したシナリオも作成する。都市近郊の山林や都市内の微細な緑地を把握するため、既存で得られる土地被覆・土地利用データとともに、微細な緑地については高解像度の衛星画像を用いて分析する。同時に、都市内に存在する木質資源の把握とともに、緑化等を行うことによってこの資源をどの程度増加できるのかを検討したい。木材家具の所有状況等のアンケート調査は早急に実施する一方で、製造業等の木質パレットの使用状況等についてはヒアリングもしくはアンケート調査を実施する準備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度、地理情報に関するデータやソフトウェアについて、現時点において予算執行しなくても代替的に入手したデータ等で十分な情報が概ね確保できた。また、来年度実施する家具や都市の木質資源の調査、さらには木質パレットの使用状況等の調査に費用がかさむ可能性が出てきたため、本年度はその分を充当するためにも予算を来年度に繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
前述したように、木材家具の所有状況等に関するアンケート調査については、すでに試験的なアンケートが終わり学会発表も行っている。そのため、アンケート内容の最終調整を行い、5~6月に実施する予定である。木質パレットの使用状況等の調査については、質問項目の吟味が必要であり、現時点では夏~秋頃の実施を予定している。都市内における緑地等の木質資源の把握とその拡大に関する調査については、秋頃を検討している。
|