本年度は、建築物の需要と供給を考慮したシミュレーションモデルと品質別原単位を統合することで建築物の解体時における木質系廃棄物を把握した。また、木質系家具においても需給を考慮するシミュレーションモデルを構築することで、その廃棄物の詳細を明らかにした。さらに、高解像度の衛星画像を用いて樹木や草地の面積を高精度に取得することで、都市内における潜在的な木材の量とその将来予測される廃棄量を把握した。他方、愛知、岐阜、三重の三県の都市と森林を対象にして非木造住宅の木造化(木質化)と住宅の長寿命化による将来の木材需給量を把握・評価した。また、木材需給バランスを考慮することで、持続的に木材供給が可能となる最適な森林管理区域の検討を行った。上記の研究により、新築される建築物にどの程度の木材が再利用可能になるのかが分かると同時に、サーマルリサイクルや発電利用されるものについては、その需要と輸送距離との関係から最適な設置場所を設定し、その供給可能性を検討できるようになった。こうした検討を将来の異なるいくつかの社会像のもとで行うと同時に、名古屋市で進められている「集約連携型都市構造」すなわち駅勢圏を中心としたコンパクト・シティといった都市構造の変化が将来の木質系廃棄物の需給にどのような影響を与えるのか、また住宅の木質化と長寿命化の程度による影響等も概ね把握した。これによって、将来を見据えた都市圏域内での循環利用促進のためのあり方が検討できると同時に、これを達成していくための最善の方策がある程度提示できたと考えられる。
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