研究課題/領域番号 |
26340105
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
古崎 康哲 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90454553)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | メタン発酵 / バイオエタノール / バイオガス / 食品廃棄物 / バイオマス |
研究実績の概要 |
本研究では食品廃棄物のメタン発酵において、廃棄物中の炭水化物成分を糖化・エタノール化処理によりエタノールに変換させる前処理を行い、その後メタン発酵させることにより、バイオガス中メタン濃度の向上およびVFA阻害の軽減が可能かどうかを検証した。本研究で得られた知見を以下に示す。 【回分実験からの知見】1)基質である模擬厨芥のエタノール反応時間は15時間であり、グルコースからエタノールへの転換率は約46%であった。2)エタノール化処理された模擬厨芥のバイオガス生成は対照系より少し早くなることがわかり、エタノールによる阻害は小さいと考えられる。また、エタノール以外の基質も十分に分解されることが示唆され、処理を行わない場合と同等の分解性であることがわかった。3)エタノール化処理を行った基質は、分解の初期段階でメタン濃度が70%以上と高くなる傾向が確認された。4)エタノールは投入後比較的すみやかに分解されることがわかった。5)基質中の炭水化物成分をエタノール化させることにより、エタノールよりも炭素数が大きいVFAが生成しにくくなることがわかり、高負荷条件でも高VFA、低pHによるメタン生成菌の活性阻害が起きにくくなることが示唆された。 【連続実験からの知見】6)エタノール化処理を行った基質は定常状態での連続運転が可能であり、バイオガス生成量は対照系より2割減少した。これはエタノール化で放出された二酸化炭素の量と概ね一致した。7) 連続運転におけるバイオガス中メタン濃度は、対照系の55%に対して69%に向上した。またこの時のバイオガス収支から、エタノール化工程で放出された二酸化炭素量の分に対応してメタン濃度が向上することがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記結果に示したとおり、研究計画調書p.4に示した[達成目標]は概ね達成することができた。 本研究で最も懸念されたことは、エタノールが含まれる基質がメタン汚泥の活性を低下させる恐れがないかどうかであったが、本研究の運転条件の範囲内であればエタノールによる阻害は起こらないことが確認できた。この条件は通常の中温メタン発酵を参考に設定しており、早い実用化が期待できる。エタノール化させた基質の分解は、エタノール化を行わない対照系と同様または少し早い結果が得られるとともに、バイオガス中メタン濃度の向上、バイオガス量の増大なども確認することができた。さらに対照系では中間生成物である有機酸(VFA)によって発酵阻害が起きるような高負荷条件であっても、エタノール化を前処理とした系のメタン発酵ではVFAの生成は少なく、阻害はほとんど起こらず良好な基質分解とバイオガス生成が可能であった。VFA阻害が小さくなること、バイオガスの生成が対照系よりも早く・多くなることは当初想定しておらず、提案したフローは予想以上に有効であることがわかった。 上記のようにエタノール化を前処理とすることにより、メタン発酵が効率化することがわかったが、これらは回分実験での結果であるため、長期的な傾向を見るために半連続実験を行った。その結果、提案内容に示した化学両論に近い結果を、2か月以上の長期に得られることができた。 以上のように特にメタン発酵の面で提案内容以上に有意な成果を得ることができたが、比較的定性的な評価にとどまっていること、連続実験については2ヶ月程度の運転にとどまったこと、など達成が不十分な点も残った。これらは次年度にも継続して解析や実験を行いたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度は提案フローで期待できる効果を概ね確認することができた。27年度では結果をより定量的に評価し、理論面と実験結果との整合性を高め、再現性の高い技術であることを証明し、実用化への道につなげたいと考えている。そこで、以下のような内容を検討している。 エタノール化工程では、ガス生成から速度論的検討を進めるとともに、研究計画調書p.4(1)②にあるように厨芥中にある様々な成分を想定して糖化・エタノール化特性を調べる。調書p.4(1)③に示すように、通常のメタン発酵に糖化・エタノール化を組み込むことによるコスト増を検討し、損益分岐点となる条件を検討する。 メタン発酵工程では、回分実験により様々な基質の速度パラメータ算出を行う。また連続実験により長期的な特性を調べるとともに、調書p.4(2)①に示すように運転管理指標の推移も検討する。また、(2)②に示すように、担体などの導入も視野に入れたHRT低減策を検討する。 両工程で共通する事項として、物質収支の整合性をよりつきつめるとともに、速度論的解析から糖化・エタノール化の効果を定量的に評価する。また本研究のフローを通したモデル構築にも取り組む。
|