本研究では、まず、一般的な急速ろ過層と同等の除濁効果を得るために必要な微細珪砂充填層厚を決定し、そのろ層が持つ基本的なろ過性能を評価した。その結果、充填層厚を10 cmとすると、低い薬注率でも小径粒子(0.5~3 μm)に対して高い除去効果が得られるとともに、初期漏出が収束するまでに必要な累積Al供給量が一般的な急速ろ過層より30%程度少ない(ろ層の早期熟成に有利である)こと、高ろ速(ろ速120 m/d以上)でろ層熟成後に流入濁度が変動すると大径粒子(5 μm以上)が漏出する傾向が見られるが、小径粒子(5 μm未満)に対しては凝集不良時でも安定した除去効果が得られることを明らかにした。 最終年度は、前年度までに構築した砂層諸元に対する効果的な洗浄法として、表層部の集中的な洗浄が期待されるパドル撹拌洗浄法を提案し、適用条件とその洗浄効果について検討した。パドル撹拌工程においては、砂層からの濁質剥離効果および剥離した濁質の微細化効果はパドルによる砂上水の撹拌G値に依存し、G値 = 300 s-1以上で必要十分な剥離効果が、G値 = 500 s-1以上で最大の微細化効果がそれぞれ得られることがわかった。また、洗浄工程の進行に伴う残留濁質のろ層内分布の動きを調べたところ、高い強度でパドル撹拌を行うほどろ層下部の清浄度が損なわれるが、G値を500 s-1程度に設定すれば影響範囲は表層5 cm程度に止まり、その後の水逆洗工程では、わずか0.2 m/minの逆洗速度でろ層深さ30 cm相当の洗浄水を通水するだけで、残留率が5 %程度にまで低下すること、水逆洗工程におけるろ層の静置・排水回数を増加させると流動状態におけるろ層からの濁質の分離・排出が促進され、最終的にはろ層深さ20 cm相当の洗浄水量で残留率が4 %以下にまで低下するなど、大幅な節水効果が期待されることを明らかにした。
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