研究課題/領域番号 |
26340107
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
前田 俊二 広島工業大学, 工学部, 教授 (00626799)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 風力発電 / 風速予測 / 自己回帰モデル / 部分空間法 / 因果関係 / インパルス応答関数 |
研究実績の概要 |
風力発電では、発電可能な発電量の把握、すなわち風速の高精度な予測が必要不可欠である。本研究では、風力発電所における短期風速予測を実現する手法を検討する。開始年度である26年度は、過去の時系列風速データに加え、近隣の多地点の風速データを入手し、データ欠損や時刻合わせを実施し、複数地点の風速データセットの評価準備を整えた。 次に、最近傍決定則や自己回帰モデル(AR)をベースラインとして、予測精度を比較することにした。上述した複数の時系列風速データセットを対象に、過去の風速データとの類似性、データ間の相似性、因果関係を解析した。その結果、(1)過去のデータセットに対し、類似データを探索し、局所平均(局所部分空間法の一種)の経時的変位を用いて未来を予測することにより、予測精度が向上すること、(2)ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)により、対象データを選択し、かつVARモデルを短期間に限定した風速予測を行うと予測精度が向上すること、(3)VARモデルの係数が、多地点の風速に関する構造を表すとして、これを含めて類似データを探索する(1)の改良版により予測精度が向上することをそれぞれ確認した。また、(4)単なる類似性のみならず、因果関係を評価することが重要であることを確認した。ここで、因果関係はVARモデルを前提に、インパルス応答関数を用いて評価した。近隣のデータでも、因果関係がくずれることがあることを確認でき、因果関係を組み込んだ予測が重要であるという必然的な結論を得ることができた。 上記(1)から(4)は、個別検討結果であるが、今後の取り組みを考える上で、有意義な結果であると考える。 平成26年度に、知能メカトロニクスワークショップにて1件、精密工学会にて2件、電気学会にて2件、計5件、いずれも査読無しの口頭発表を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数地点の風速データが有する特性に関して得られた知見をベースに、基本的な風速予測の方針を得ることができたと考える。おおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの準備と試行に基づき、下記を推進する。 ・選択した類似データの理解とデータ選択方式改良 ・風車基準での予測誤差の自律的修正による予測精度向上の仕組み構築 ・風況データの追加と評価改良 なお、多地点の風速データを対象にしたが、予測地点を包囲するには不足しており、さらに時刻の観点でも限定されたデータである。今後、方位と時刻のカバー範囲を拡大すべく、更なるデータ入手を図り、まだ見えていない特性があるかどうかを見極めたい。 また、風況をどの周波数レベルで予測するか、予測できるかは、まだ見えない課題であり、因果関係を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機環境を整備する一方で、可能な限りメールと電話を多用し、旅費の支出を抑制したため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
データ取得の方法と条件の議論、授受に関しては最低限の出張が必要であり、これに使用する。
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