風況鉄塔と呼ばれる気象観測用パイロットプラントを含む多地点の風速データを用いて風力発電所の風速を予測する課題において、ニューラルネットワーク(NN)による短時間風速予測を検討した。NNにおける予測において、以下に述べる2つの新規手法を提案した。 ・ベクトル自己回帰モデル(VAR)の係数が類似している過去データを、NNに学習データとして与える手法 ・NNへの入力データ自体に、多地点の風速データとしてVAR係数の大きいものを選択する手法 学習データをVAR係数の類似性に基づき選択することによって、風況の場が似た過去データを学習データとすることができ、予測精度が向上することを確認した。さらに、VAR係数の大きい風速データをNNへの入力にすることによって、風速変動の予兆が表れているデータを活用することができ、予測誤差はさらに低減した。 本報告で述べた提案手法とその評価結果は、予測対象の風力発電所のみならず、その周囲に設置されたパイロットプラントのデータを用いることによって、より高精度な風速予測を実現し得るということを示している。特に、風速の変動が急峻な期間での高精度風速予測を実現しうることを示している。 さらに、サポートベクトル回帰(SVR)を用いた短時間風速予測を検討した。k近傍法により類似した過去データを学習データとして用いる際、風速以外の気象データを重回帰分析により選択することでも、風速のみを学習データとして用いた場合に比べ、予測結果が改善し得ることを確認した。重回帰分析を用いることで、風速には現れない予兆を他の気象データから読み取ることができ、気象学的にも理にかなったデータの活用ができることを確認した。
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