研究実績の概要 |
バイオマスは、持続可能な社会の構築を担う再生可能エネルギーの有力株と目されて久しいが、その普及率は大きく伸び悩んでいる。この技術的な要因のひとつが燃焼灰の溶融化である。溶融化した燃焼灰(クリンカー)は、燃焼の立ち消えなど燃焼機器の連続運転の可否に大きな影響を与えるだけでなく、農地や林地への肥料としての価値も低減させるものとなっている。本研究では、高灰分の木質ペレット(比重0.55)と同じ原料から同サイズのバイオコークス(比重1.4)を製造し、家庭用木質ペレットストーブを用いた燃焼比較実験を通して、燃焼形態の違いによるクリンカー形成機構の違いについて探ることを目的とした。 この結果、市販の木質ペレットと同じ原料から製造したバイオコークスを混焼することでクリンカー形成が抑制されることの知見を得た。木質ペレットの燃焼に伴うクリンカー形成は、灰分組成から生成される燃焼灰を二酸化ケイ素と仮定すると、その融点1,650℃を超えることでおこなわれると思われる。バイオコークスは、高温強度が大きいために燃焼の進行に伴う形状崩壊が起こらず、酸素が必要以上に供給されることがないため群燃焼時でもその融点を超えずにクリンカーが形成されないと考えている。一方、木質ペレットは、高温強度が小さいために燃焼の進行にともなって形状が崩れて空気との接触面積が大きくなり、群燃焼させることで燃焼温度が上がり易く、燃焼後の燃焼灰の温度がその融点を超えてクリンカーが形成されると考えている。平成28年度は、混焼率を最大5%まで段階的に増やす実験をおこなった。一連の研究で、木質ペレットと同サイズの小径バイオコークスの生産性の低さが課題となった。一連の燃焼実験で用いた木質ペレットの組成分析の他、国内外での発表(国内和文18件、国内英文1件、国外1件)や論文投稿掲載(国内和文4件、国内英文1件)などをおこなった。
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