研究課題/領域番号 |
26340111
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三上 直之 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (00422014)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 討論型世論調査 / 世界市民会議 / 市民参加・住民参加 / 科学技術社会論 / 環境社会学 / エネルギー政策 |
研究実績の概要 |
初年度である平成26年度は、国レベルと多国間とでそれぞれ一つずつ、最新の典型的な事例を取り上げ、事例研究を行った。 一つ目の事例は「エネルギーと環境の選択肢に関する討論型世論調査(DP)」である。これは、福島原発事故の翌年、将来のエネルギー政策のあり方に関する「国民的議論」の一環として政府が実施したものであり、結果は当時の政権が策定したエネルギー・環境戦略に反映された。国レベルの政策決定に直結する形でミニ・パブリックスが用いられた稀有な事例であるこのDPの実施過程とその帰結を分析した論文を執筆し、福島事故の背景や影響を論じた単行本(Fujigaki編 "Lessons From Fukushima")の1章として発表した。 二つ目は、多国間でのミニ・パブリックスの事例として「世界市民会議」を分析した。この会議は、世界数十カ国で同じ日に、同じテーマについて、100人規模のミニ・パブリックスを実施し、議論の結果を集約して国連を始めとする国際機関などに提供するものである。この会議で、地球規模の課題と参加者の日常的な生活実感との間にあるギャップ(global-local gaps)がいかに顕在化し、議論の過程でどのように克服されようとしているかを、討論の質的分析を踏まえて解明した。成果となる論文は、平成27年度初頭に刊行の予定である。 これらの論文とは別に、現代社会におけるミニ・パブリックス型の手法の意義を解説した論文を、一般向けの書籍(『市民の日本語へ』)の1章として出版した。 この他、ミニ・パブリックスと組み合わせて用いうる手法の候補として、ロールプレイの意義について検討し、学会で発表した。また、自治体レベルでのミニ・パブリックスの活用可能性を探るため、湖沼の利用と環境保全との利害調整が課題となっている北海道七飯町大沼地域を対象にインタビューと資料収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国レベルと多国間レベルでそれぞれ一つずつの代表的事例について分析を行い、その結果を英語論文として取りまとめることができ、うち1事例については国際学会で報告するとともに、平成27年度に予定していた出版にまで進めることができた。また、当初の計画では最終年度(平成28年度)に実施することを想定していた研究成果の普及も、一般書の執筆という形で一部実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当面は事例の収集と分析を継続する。平成26年度は国レベルと多国間レベルの代表的な事例の分析に注力したので、平成27年度は自治体レベルの事例の収集・分析に力点を置く。収集した事例に基づいて、ミニ・パブリックスが既存のガバナンスの構造や政策過程と親和性を持ち正統性を付与されるのはどんな場合であり、逆にミニ・パブリックスの導入が軋轢を起こすなどして有効性を欠くのはどんな場合かなどを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、最近の代表的なミニ・パブリックス事例の分析と、その成果の取りまとめと発表を優先したため、当初可能性を想定していた外国訪問調査等を行わなかったため旅費に未使用分が生じた。物品費についても、所属機関所有のパソコンやソフトウェアを使用することにより、節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
主に旅費としての使用を計画している。平成26年度の実績を踏まえて事例収集・分析をさらに進めるため、訪問調査等を積極的に行う。また、当初計画を上回るペースで研究が進展していることから、関連分野の学会に出席し、研究成果の発表や交流を図る。
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