本研究において当初目指していた,事例研究を通じたミニ・パブリックス導入状況の分析や,活用に際しての基本的な考え方の整理などは,前年度までにおおむね終了していたことから,最終年度は,国際学会を含めた成果の発信・交流と,地域レベルでの事例に密着した活用可能性のさらなる検討に注力した。 成果の発信・交流としては,第1に,環境政策や関連諸分野におけるミニ・パブリックスの活用事例とその含意について考察した研究成果を,3度にわたり,国際学会(スペイン・中国),国際シンポジウム(東京)で報告した。第2に日本語での出版として,「市民参加の話し合い」をテーマとした書籍の中で「世界市民会議」の事例を紹介する章を分担執筆した。第3に,関連するテーマでの国際ワークショップの実施にも取り組んだ。2016年7月,研究代表者がオーガナイザーとなり,韓国カトリック大学の研究者らを北海道大学に迎え,科学技術や環境分野の市民参加に関する国際ワークショップを開催した。この中で,ミニ・パブリックスの活用事例に関して両国から研究・実践成果を報告し,交流を行うことができた。9月には,環境社会学の研究者らとともに英国エディンバラ大学を訪問して環境ガバナンスに関する日英交流ワークショップを行い,研究交流を図った。この交流が契機となり,研究代表者が,ミニ・パブリックスを含む "democratic innovation" をテーマとした英文のハンドブックを出版するプロジェクトに執筆者として参加する機会を得ることになった。 他方,地域に密着した活用可能性の検討としては,日本国内における地域レベルでの環境保全,自然再生の事例や,北海道における地域づくりの取り組みを対象として,ミニ・パブリックスを生かす方途を探った。関連する主題で,3回の国内学会発表(うち1回は招待),2件の日本語書籍出版(分担執筆)を行った。
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