本年度は、家庭用蓄電システムのリース事業を行っている企業と連携し同社の蓄電システムの実際の利用者を対象に行ったアンケート調査の結果を踏まえ、年齢、家族構成、居住形態、太陽光発電システムの利用の観点から、蓄電システムがどのような意義や恩恵を利用者にもたらしているかより具体的に把握するため、グループインタビュー調査を行った。同調査では、どのような要因が蓄電システムの普及の促進要因あるいは阻害要因になっているのか把握した。その結果、昨年度実施したアンケート調査においても明らかになったように、経済的インセンティヴが最も重要であることが確認され、さらに年齢、ライフステージ、家族構成(例:子供の有無)によって、蓄電システムに求める他の効果(例:非常時の安心、安全)やPVシステムと蓄電システムの所有による電気代支払い額軽減の主観的認識が変わる傾向にあることを確認した。また、利用者の観点のみならず、太陽光発電システムや蓄電システムに関わる研究者・実務者、関連する住宅メーカーのスタッフなどと今後の蓄電システムの普及に関する研究会を計4回開催した。その結果、今後の蓄電システムの普及のためには、同システムが有する複数の機能について社会的な理解が進むことが重要であること、住宅における利用のみならず、電気自動車などとの連携やブロックチェーンなどの新しい技術との融合による機能共有化や拡張性の担保などが重要となり、そのプロセスの中で、小型化、低価格化、補助金などによる政策的普及支援が重要となることをが明らかになった。これらの点を踏まえて、今後の蓄電システムの普及のシナリオを検討、構想し本研究を取りまとめた。
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