研究実績の概要 |
日本で発生する食品廃棄物は、年間1,713万トン(2011年)から1,767万トン(2017年)と増加傾向を続けている。2016年の1,970万トンに比べ、削減努力は奏功している傾向 も窺えるが、依然高い水準である。こうしたなか、国連「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年)にて、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たり食料廃棄を半減させるなどの目標が掲げられた。日本政府は「日本再興戦略2016」などに、食品ロスの削減やフードバンク活動推進を新たに加えるなど対策強化に乗り出しおり、現在は「食品ロスの削減の推進に関する法律案」の成立を目指した動きもあるなど、食品廃棄物に対する注目度は近年益々高まっている。 本研究は、商慣習ルール変更の社会実験結果を参考に、フードチェーンにおける食品廃棄物の発生抑制ポテンシャル量の把握と、発生抑制が実現した際の経済面・環境面への効果を定量的に把握することを目標としている。これまでも、政府により食品リサイクル法により事業者に廃棄削減を促すなどの対策は講じられてはきたものの、削減傾向には限界があるとも指摘されている。そこで、複数のシナリオを設定し、極端なケースであったとしても、どのシナリオが実現する場合には、どの程度の効果が見込めるかを定量的に把握した。当初の研究計画では、ヒアリング調査をもとに、実現可能性の高い妥当な削減ポテンシャル量を把握する計画であったが、家庭の事情によりヒアリング・実地調査等が困難な状態であるため、実現可能性には拘らずに複数シナリオをもとに分析した。 一方で、流通業者によるフードバンク活動の活発化も確認されているものの、フードバンクに起因する削減効果の定量的把握は困難であったことから、本研究の対象外とした。フードバンクを含むフードチェーン全体の潜在的削減ポテンシャル量の分析は今後の課題である。
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