研究課題/領域番号 |
26340118
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
櫻井 次郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40362222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境訴訟 / 公害訴訟 / 被害者救済 / 中国 |
研究実績の概要 |
初年度は先行研究の調査、第1回の現地調査を行った。先行研究については、環境訴訟のみに的を絞らず、中国の司法及び裁判に関わる研究を英文、和文、中文の3つの言語において収集した。英文資料では、中国における司法改革の評価を試みたワークショップの成果をまとめた書籍 "Chinese Justice: Civil Dispute Resolution in Contemporary China"(edited by Margaret Y. K. Woo and Mary E. Gallagher)がCambridge University Pressから2011年に出版され、ここでは現在の司法改革の問題点のみならず清代の紛争処理システムからの連続性についても分析されており、関連文献を収集する最初の手がかりとなった。また、和文では高見澤磨・鈴木賢『中国にとって法とは何か―統治の道具から市民の権利へ』(2010年、岩波書店)が、同様に王朝期の紛争解決システムの特徴を整理しており、本研究における考察に重要な基礎を与えた。 これらの先行研究の調査によって、中国が法の近代化を目指した当初から意識されていて、現在まで基本的には変化せず継続しているいくつかの特徴が確認された。そして、これらの特徴が中国における環境被害者救済を阻害する要因として、その他の、たとえば現在の政治システムにおけるいくつかの特徴とどのように関連するものなのか、という本研究の課題をより明確にした。 このような問題意識に基づき、昨年度末には、7年前に公害訴訟が検討されながら結局訴訟提起にまで至らなかった鉱山周辺の汚染地域を再度視察し、地域の村民委員会役員に対するヒアリング調査を実施した。この調査によって、被害地域の政治指導者が裁判の機能や役割をどのように認識しているのかについての情報が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究については、まだ継続して収集・整理しなければならない文献・資料はあるが、当初から想定されている範囲内であり、おおむね順調に進展していると評価し得る。 また、現地調査については、裁判所(法院)へのヒアリングは進んでいないが、被害地域での調査が進んでいる。これも当初の予定から大きく遅れるものではなく、おおむね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、1年目に引き続き先行研究の調査、特に学術論文で収集・整理されていないものを徹底的に集め、関連する先行研究の成果と本研究の国際的な学術的位置づけを明確にする。 また、本研究の研究課題を達成するため、弁護士、裁判所、NGOへのヒアリングを進め、環境訴訟の受理プロセスにおける各主体の行動と法意識の把握に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査を2回予定していたが、学内業務が多忙であったため1回しか行けなかったこと、また、パソコンの買い替え計画をしていたが、買い替えを見合わせたこと。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査を増やし、パソコンの買い替えを実行する。
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