研究課題/領域番号 |
26340118
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
櫻井 次郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40362222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公害訴訟 / 公害被害者 / 中国 / 裁判 |
研究実績の概要 |
本研究課題の2年目にあたる平成27年度は、河北省及び北京市で活動する弁護士及び環境NGO等へのヒアリング調査と、湖南省で深刻化する重金属汚染の被害地域における実地調査を行った。 1回目のヒアリング調査では、河北省の石家庄で弁護士事務所を運営し、環境問題関係の法律相談や行政部門への環境法レクチャーなどを行っている弁護士と、行政や企業が公開する情報をもとに企業を監視する環境NGO、そして企業と市民との間で環境紛争トラブルの解決を仲介している環境NGOをそれぞれ訪問し、ヒアリング調査を行った。それぞれの立場から訴訟や裁判が果たしている役割について意見を聞くことができた。 また、2回目の現地調査は、湖南省の鉱山跡地を2か所、石門県と三十六湾市を訪ね、鉱山跡地における環境汚染防止措置の実態を観察するとともに、石門県では被害者への聞き取り調査も行った。それぞれの実地調査においては、現地で活動する環境NGOの案内を頼った。両地域の共通点は、それぞれ鉱山の歴史は30年以上あり、近年では被害者が被害状況や被害者の訴えをビデオ撮影し、それをもとに現地政府に被害補償要求していることである。また、汚染被害の拡大を防止するため、鉱滓の処分場を建設したり鉱滓の流出を防ぐ措置を行うなど、何らかの汚染防止措置をしていることも共通点として確認できた。しかし、少なくとも石門県においては、被害者側の要求についてはその一部しか認められず、救済はほとんどなされていない状況であった。他方、三十六湾市では、被害の集中していた村が集中移転していたことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の研究計画に書かれているとおり、基本的な先行研究を渉猟し、2つの地域で現地調査を実施し、弁護士、環境NGO、および被害者にヒアリング調査を行うことができている。以上の点は、おおむね研究計画通りに進んでいる。 但し、裁判所へのヒアリング調査はまだ進んでおらず、裁判官の公害訴訟への意識調査は課題として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の平成26年度には資料収集と1回目の現地調査(広東省の大宝山鉱山)、2年目の平成27年度には2回目(河北省・北京市)と3回目(湖南省)の現地調査を行い、汚染被害地域、環境NGO及び弁護士へのヒアリング調査を行うことができたが、裁判所へのヒアリング調査が未定のまま残されている。そこで今年度は、汚染被害地域での調査を継続するとともに、裁判所へのヒアリングを重点課題として研究を進める。現時点での予定では、環境特別法廷が設置されている無錫市の裁判所でヒアリングを行うよう計画を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
裁判所での調査を予定していたが相手方の事情により行うことができなかったこと、弁護士へのヒアリング調査についても同様に、当初予定よりも少なかったため、海外調査の日程が短期間になったことが大きく影響している。また、買い替えを予定していたパソコンの購入を見合わせたことも関係している。
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次年度使用額の使用計画 |
中国での実地調査では、これまで通り被害地域における調査を継続するとともに、裁判所及び弁護士へのヒアリングを行い、これに必要な経費を科研費補助金に充てる。また、新たな使用環境に堪え得るパソコンの購入も行う。
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