本研究では、裁判所が被害者の訴えを受理しない「不立案」という現象が、訴訟法改正による制度変更によってどのように変化したのか検討した。研究構想段階では、中国環境公益弁護士聯合会に集う弁護士の協力のもと、係争地の裁判所や被害者への聞き取り調査を実施する予定であったが、近年の弁護士に対する圧力強化により現地での調査遂行が困難となったため、弁護士事務所での聞き取り、訴訟係争地以外の公害被害地域の視察、関係者を日本に招聘して講演会を実施する方法によって初期の研究目的の達成に努めた。これらの調査研究の結果、訴訟法改正後も、健康被害が広範に及ぶ環境公害では訴訟が受理されていないことが明らかとなった。
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