研究課題/領域番号 |
26340120
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60203874)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物多様性保全 / サンゴ再生 / サンゴ移植 / 保護区 / 取引禁止 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、主に以下の研究を行った。 1. 沖縄の商業的サンゴ移植の経済学的特徴とその性質について考察を行った。サンゴ礁の再生手段として、サンゴ苗の移植は広がりつつある。沖縄では、非常に興味深い商業的取り組みが進められつつある。通常は、政府などが主体となり、移植の費用(苗やボート、ダイバーへの支払)を負担するが、沖縄の商業的移植では、ダイバーがボランティアとして購入し自ら移植を行う。こうした特徴が、どのように効果的でどのように問題があるかを、経済学および生物学の観点から明らかにした。より望ましい形に誘導するために、種苗の段階的利用を促進することが有効である。この研究は、英文誌Ecosystem Servicesに公刊した。 2. 生物多様性の保全をめぐる包括的議論を行い、『生物多様性保全の経済学』として公刊した。その内容は、生物多様性とは何か、規制のあり方、保護区、ワシントン条約、地域主体の保全、生物多様性条約、認証、貧困との関連、そして資金調達である。それぞれの章で、これまで行ってきた研究をまとめるだけではなく、規制と利用に着目しながら、今後の課題を明らかにした。とりわけ、保護区については、その経済的側面の包括的な研究展望と問題提起が出来た。 3. 密猟を含む生物多様性利用についての研究を、特に、絶滅危惧種の取引禁止の効果に着目して進展させた。その一部は、5th World Congress of Environmental and Resource Economistsで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
規制と利用の仕組みについて、包括的に概要と課題を提示することが出来た。また、興味深い例として沖縄の商業的サンゴ移植について、規制のあり方の観点から議論することが出来た。さらに、絶滅危惧種の取引禁止の効果についても、研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
・保護区の経済モデルを構築し、その規模と保全効果について厳密な考察を行う。 ・絶滅危惧種の取引について、十分な経済的意味づけの下で、その効果を明確にする。 ・上記を一つのモデルとしてまとめ、より現実に即したモデルとして分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた外国出張が先方の都合で延期になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
1. マレーシア・サラワク州での調査を行い、その結果を入れた英語での出版を計画していおり、調査費と英語校閲を行う。 2. 国立公園を経済モデル化する。そのための実態調査の旅費を使用する。 3. 昨年度行った規制と違法採取に関する研究を投稿するための英語校閲費用を使用する。
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