研究課題/領域番号 |
26340123
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩井 雪乃 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 准教授 (80507096)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 住民主体の自然保護 / コミュニティ・ツーリズム / Wildlife Management Area / アフリカゾウ / 国立公園 / タンザニア |
研究実績の概要 |
研究目的: アフリカの自然保護政策は近年「住民主体」を標榜しており、その具体的な実行策として、これまで中央政府が独占してきた観光業に関連する権限を、地方に分権化することを始めている。タンザニアにおいては、1998年にWildlife Management Area(WMA)という新制度がつくられ、動物保護区周辺のコミュニティが、独自に保護区を設立して観光企業を誘致することができるようになった。このWMA導入以降の現状を明らかにし、批判的に検討することが今年度の目的である。
研究方法と成果: 昨年度は、セレンゲティ国立公園に隣接するイコナWMAにおいて、WMAのメリットとデメリットの認識について調査した。その結果、参加している村の中でも差あり、満足している村とそうでない村があることが明らかになった。さらに今年度は、観光業を牽引するホテル企業および旅行会社を中心にセレンゲティ地域で聞き取り調査を実施した。資本をもち、顧客である観光客との接点をもつホテル企業や旅行会社の権力がもっとも大きいことが確認されたが、地域コミュニティの関わり方や、地域住民の雇用の機会は常に変化しており、今後、住民の発言力が高まる可能性を示唆することができた。これらの研究成果は、学会発表、ウェブジャーナル、ウェブサイト、書籍等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3つの分析軸から検討を進めている。すなわち、①中央政府-地方政府-コミュニティの間での権限移譲のせめぎあい(政府-コミュニティ)、②隣接コミュニティ間での格差是正の仕組み(コミュニティ-コミュニティ)、③コミュニティ内での観光利益の分配方法のガバナンス(コミュニティ内)である。これまでのところ、それぞれの分析軸に関して、文献およびフィールドワークを実施しながら、バランスよく研究を進めている。 比較として、タンザニアの複数のWMAおよび南アフリカの市場経済原理を重視した観光開発にについて、今年度は研究を進める計画である。
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今後の研究の推進方策 |
タンザニアのイコナWMA参加村および周辺の非参加村において、フィールドワークを実施する。タンザニアでは2015年11月に5年に1度の大統領・国会議員・県議会議員の選挙があり、セレンゲティ県では野党候補が与党をやぶって勝利するケースが多かった。この政治変化における、WMAを含む自然保護政策への住民の意識がどのように影響したかを明らかにする。それにより、分析軸①②の政府―コミュニティ関係、コミュニティーコミュニティ関係をより具体的に分析する。 また、調査対象である7村落のガバナンスを比較するために、アフリカゾウによる獣害対策の実施状況を調査する。これにより、分析軸③につながるデータを収集できる見込みである。 さらに地域間比較のために、タンザニアの他のWMAに関する文献研究を進める。そして、南アフリカとボツワナへのフィールドワークも実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費を再検討し、必要ないものの購入を見送ったため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度のため、成果発信のためのHP作成の費用に充当する計画である。
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