アフリカの野生動物保全政策「住民主体の自然資源管理」にもとづき、タンザニア政府は、観光による経済的な便益を住民に還元する新制度「ワイルドライフ・マネジメントエリア(WMA)」を、2000年代から開始した。 本研究では、設立から10年が経過したWMAが「住民への権限委譲」と「観光便益の還元」を達成しているかを検証した。調査は「成功モデル」とされるイコナWMAで行った。調査からは、4つの課題、①WMA設立手続きの複雑さ、②観光便益の減少、③ガバナンスの脆弱性、④土地利用計画の変更の困難さ、が明らかになった。中でも深刻な課題は④であり、これによってWMAが土地収奪ツールとなってしまっていた。
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