研究課題/領域番号 |
26340124
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
在間 敬子 京都産業大学, 経営学部, 教授 (70349182)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境経営 / 中小企業 / オープン・イノベーション / 制度設計 / エージェントベースモデリング |
研究実績の概要 |
中小企業の環境経営を促進することは重要な環境政策課題の一つであるが、中小企業はそれぞれ事業や人材等の経営課題に直面している。本研究の目的は、経営課題に着目して中小企業のタイプを分類した上で、中小企業が経営課題解決と同時に環境経営を促進しうるオープン・イノベーションを活用する支援策を設計することである。 平成26年度は基礎的調査を実施した。具体的には、中小企業の経営課題に関する既存の調査資料から、経営課題項目をリストアップし、オープン・イノベーションの概念についても基礎的文献と研究資料を収集し内容を整理した。それにより、オープン・イノベーションの概念は、特に大企業の研究開発に焦点を当てるものであるため、中小企業や中小企業を含むコミュニティに適用するためには概念整理が不可欠であることが明らかになった。既存研究では、大企業がベンチャーの技術や知識フローを活用して開発のスピードアップを図るというケースが見られるが、その逆は少ない。またコミュニティを含む研究論文もいくつか見られるが、それらは、特定の産業のリーディング企業からなるコミュニティ(例えばRogo et al. (2014))であるケースや、研究を促進する都市などのコミュニティ(例えば、Almirall (2014))といったケースである。 さらに平成26年度はコミュニティにおいて中小企業の環境経営推進を経営改善と結びつけて取り組む鹿児島の事例を調査した。中心となる組織はNPO法人エコサポートTGALで、その支援により環境経営を推進する企業として、株式会社西栄設備事務所、十文字工業株式会社、有限会社丸徳産業、大口酒造株式会社、株式会社サンライズ精工へのヒアリングを行った。各社とも外部による支援や連携によって経営改善と結びつけた環境活動を展開していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は既存の調査資料や研究論文のサーベイを中心に実施した。「オープン・イノベーション」「中小企業」「環境経営」「経営課題」がキーワードとなるが、それぞれについて非常に多数の資料等があったため収集には予定よりも時間を要した。また、クロスするキーワードに関する研究資料を抽出する検索も、やや難航した。そのため、当初の予定では、それらのキーワードに関する概念モデルを作成することや、アンケート調査票の設計も、平成26年度実施の予定であったが、そこまでには至らなかった。従って、平成27年度は、それらの設計からスタートする必要がある。ただし、経営改善と環境経営を結びつける事例調査では、地域を絞り、中心組織にコーディネートを依頼したことで、充実したヒアリングができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、基礎的調査をもとに以下の4項目の研究を行う。第1に、「オープン・イノベーション」「中小企業」「課題解決」「環境経営」に関する概念モデルを検討する。第2に、中小企業へのアンケート調査を設計する。アンケート構成項目は、企業属性、経営課題と重要度、環境経営の活動内容、環境経営に関する課題、外部資源の活用である。第3に、作成したアンケート調査票をもとに、プレ調査を実施する。実施対象はこれまでに調査した企業に協力を依頼する。その上で調査票を修正する。第4に、調査対象を決め、調査を実施し、集計を行う。環境経営を課題とする中小企業の割合が少ないことが既存調査から示されているため、本調査対象としては、すでに環境活動を行っている企業を対象にする方針であり、適切な協力先も選定する。第5に、概念モデルをもとにエージェントベースモデルを作成する。
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