中小企業の環境経営を促進することは重要な環境政策課題の一つである。本研究の目的は、中小企業が様々な経営課題に直面している点を踏まえ、経営課題に着目して中小企業のタイプを分類した上で、中小企業が経営課題解決と同時に環境経営を促進しうるオープン・イノベーションを活用する支援策を設計することである。 平成28年度は、まず前年度に引き続きヒアリング調査を実施した。先進事例として分野の業種の異なる3社を取り上げ、ヒアリング調査を実施した。いずれも60年以上操業を続けている中小企業で、中小企業支援組織により優れた環境経営企業と評価されている。これらの企業について、環境経営の環境ビジネスと組織マネジメントの特徴、および、外部支援利用とオープン・イノベーションの可能性について事例分析を行った。 次に、本研究およびこれまでの実証研究を踏まえて、中小企業の環境経営推進に対する支援機関による知識提供の役割を分析するために、エージェントベースモデルを設計し、シミュレーション分析した。現状を再現しうる基本モデルを踏まえて、知識提供の対象に関する複数のケースについて応用モデルを作成し、その効果を分析した。 さらに、平成28年度は、「本業の強み、本業での外部連携、外部情報・知識・技術支援の重要度」「経営課題」「経営課題に対する外部情報・知識・技術の重要度」「環境ビジネスの有無と内容、ある場合の外部連携や支援利用」「EMS認証取得の有無、取得における外部支援利用」「社会貢献活動、外部連携活動の有無」「環境活動・対策に対する外部情報・知識の重要度」「環境活動・事業と経営改善の結びつきの認識」の項目について、機械・金属業で従業員数300人以下の製造業中小企業3600社を対象とし、アンケート調査を実施した。中小企業の環境経営タイプと、経営課題の認識および外部支援の認識のかかわりを明らかにした。
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