研究課題/領域番号 |
26340125
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 風力発電 / 太陽光発電 / 系統連系 / 給電情報 / 優先給電 / ドイツ / 逆潮流 / 系統拡張 |
研究実績の概要 |
1、風力・太陽光発電(PV)電力を優先的に、中圧・高圧系統から特別高圧系統へ逆潮流・上流送電させる系統運用について、公開データ[15分,MW]に基づき,ドイツの50Hertz送電管区とTenneTの送電管区の実態を分析した。垂直負荷は、110kV系統と380kV系統との間の送受電を示す。垂直負荷変動は、1時間rampおよび2時間rampでみても、残余需要変動と明瞭に相関する。低負荷時で風力・PV出力が多い時には、風力・PV電力の余剰分は110kV系統から380kV系統に逆潮流・上流送電される。 2、風力を大量連系する110kV配電系統では、風力出力の多い時に余剰電力を380kV系統へ逆潮流させることは日常的な系統運用である。E.DIS配電系統では、年総時間の45%で逆潮流が発生している。 3、ドイツの系統運用者は、再生可能エネルギー法(EEG)により、上流の送電会社も含めて、再エネ電気を物理的にも優先買取・優先送電するよう義務づけられている。かつ、上位電圧系統も含めて、電力網を拡張・増強するよう義務付けられている。 4、50Hertz管内の風力・PV出力変動と50Hertz -TenneT間の地域間送電電力の相関を確認した。50Hertz管区南部のNo.413、 No.414では、送電容量に対する送電負荷割合が50%以上となる時間数が年間時間の約20%に達する。50Hertz-TenneT間の連系線負荷変動は1時間rampで1GWを超える。ドイツ送電業者は、地域連系線の送電電力を柔軟に変動させ、風力・PV電力を広域送電している。 5、再エネ電力の優先給電を確認するため、エネルギー事業法(EnWG)、電力網アクセス規則(StromNZV)により、詳細な給電情報の開示が義務付けられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、今年度は、風力・太陽光の出力変動による電力系統への影響に関して、公開実績データの分析方法について精緻化を図った。風力出力変動による配電網の電圧変動、系統容量の拡張対策、電圧調整のための無効電力供給規則の分析を行った。ドイツの給電および系統データ(15分MW)の分析について、ドイツRostock 大学研究者から協力を得ることができた。 2、太陽光出力変動が低圧・中圧配電網の電圧変動に与える影響について、ドイツFraunhofer IWESの研究員よりデータ分析の協力を得ることができた。ドイツの配電網運用者のヒアリングにより、風力・太陽光出力変動を系統拡張対策、無効電力調整の接続規則について、接続規則の理解を進めることができた。これらにより、給電データの分析が容易になった。 3、2016年3月に行われた日独再エネ会議(Japanese-German Workshop on Renewable Energies, Tokyo (Organized by DLR: German Aerospace Center, University of Stuttgart, International Superconductivity Technology Center)で発表した(Asami TAKEHAMA.Reverse power flow from high voltage grids to extra-high voltage grids, bi-directional grid operation in Germany - Policy implications for wind and PV energy integration in Japan)。これにより、新たなネットワークを得ることができ、技術的なアドバイスを得る見通しができた。
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今後の研究の推進方策 |
1、欧州送電網およびドイツ送配電業者の情報開示体制を分析し、給電情報の開示項目、インターネット開示の方法、法規則、電力網への接続規則を確認する。日本の給電情報開示に提案を行う。インターネット開示にかかる法律、EU指令における法的開示の項目、開示方法の規則を整理、差別のない系統アクセスと電力取引の公正の点について、義務的開示項目、開示方法の規則を整理する。ネットワーク規制庁の電力網運用者における開示ガイドライン、EUにおける電力市場のデータ開示、インサイダー行為と電力市場操作の禁止に係る規則を整理する。 2、インターネットの開示ポータルの分析。開示項目、データ様式、開示方法を確認する。 ドイツの送電・配電会社、欧州送電業者entso-e、欧州電力市場、電力広域的運営推進機関の各ウエブサイトの分析を行う。 3、分散型電源と再エネ電源の接続規則・技術要件の分析。系統運用者が分散型電源から収集する項目を確認する。風力・太陽光の連系では、系統電圧の変動と系統の過負荷が問題になりやすい。高圧・中圧系統が分散型電源からどの情報を収集・通信させているか、接続規則に基づき確認する。 4、太陽光大量導入による西日本の電力管区の電力需給バランスへの影響、関西電力管区と隣接する管区への地域間送電の可能性について、簡易な計算を行う。これについては、ロストック大学の研究者との協力により行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
電力潮流計算ソフトPowerFactory, PF4 Education, (DIgSILENT GmbH)を購入して、太陽光大量導入による西日本の電力管区の電力需給バランスへの影響について、簡易分析を行う予定であった。そのため、予算を残していた。しかし、西日本の風力・太陽光の発電データの収集に時間がかかったことから、発注が遅れた。その後、翌年度に、別の研究費により、当該ソフトの購入の予算を得られる見通しを得たため、翌年度に、別の研究費で購入することとした。この結果、そのソフト購入費に相当する金額が未執行となり、翌年度使用額になった。
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次年度使用額の使用計画 |
太陽光大量導入による西日本の電力管区の電力需給バランスへの影響の簡易分析について、潮流計算ソフトの練習をする必要があるため、ドイツの研究者から協力を得る。また、西日本の電力管区に関する風力・太陽光の電力データの分析について、日本の風力発電協会の関係者に協力を得る必要がある。次年度使用額については、これらの研究活動のための研究旅費の一部に、使用する。
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