【H.28年度】 国内外で代表的な温熱指標として利用されている,WBGTと同様に実用面で優れ,かつ評価対象であるヒトの運動強度・時間,着衣量,体格なども考慮された,新しい温熱指標HSDを提案した.HSDは気象環境に支配される外的な熱負荷に加えて,衣服条件に影響される顕熱交換量を考慮することにより,温熱指標として被験者の熱ストレスを,WBGTと比較してより正確に反映できることが示唆された.また,携帯型測定機器を使った簡易な測定が困難な,人体の吸収放射量を,黒球温度と気温から推定することにより, HSDの屋外環境での運用について,測定項目に風速を追加するだけで,実用上十分な精度で熱ストレスを評価できた. 【全体】 夏季の昼間最高気温と夜間最低気温に関して,サブ都市スケールに発生する都市内気温偏差について,天候や周辺の地理的要因との関連を検討した.地理情報システムを活用して,市街地において周辺の気温に影響を与える可能性が高い地理的要因を,土地被覆因子として数値化し,都市内気温偏差を目的変数とした重回帰モデルに採用される因子を調べた.昼間最高気温に関して,海風卓越日と非海風卓越日との間で平均値に有意な差は見られなかった.しかし,海風卓越日に昼間最高気温の地点間較差は大きかった.都市化による高温化が進む都市域における昼間気温に対して,河川上を吹走する海風が極めて大きな冷却効果を持っていた.昼間最高気温について8月の1ヶ月間を統計期間とした場合,月平均都市内気温偏差は線形性を有し,土地被覆因子を説明変数とした重回帰分析法による推定が可能だった.夜間最低気温は海岸から遠いとりわけ緑地で低くなり,緑地面積が大きいほど低温傾向が顕著だった.夜間最低気温では昼間最高気温の場合よりモデルは頑健であり,緑地周辺における低温「クールアイランド現象」が,局所的かつ明瞭に出現していた.
|