研究実績の概要 |
維持可能な社会の構築が求められる今日、地域振興デザインにおいては、これまでの経済効率優先の方法論に代わり、地域の魅力の創出や地域アイデンティティの確立に基づいた内発的地域振興への移行が求められている。本研究は、これまでアジア各地において実践されてきたさまざまな地域振興に関するデザインのなかでも、特に内発的地域振興の視座からなされてきた実例を収集し、その理念の構築と実践に関する諸相を明らかにする。主に実地調査ならびに民官学さまざまな立場で携わる研究者・実践者らとの協議に基づき、さらなる生活文化の育成に向けた地域振興デザインのあり方を考究・提示することを目的としたものである。 平成28年度においては、以下の活動を展開した。(1)日本における先行事例として、民俗学の領域において展開されてきた同種の取り組みに関する事例収集を行った。(2)日本における事例調査の一環として、福岡県、佐賀県において、研究者・実践者らとの情報交換を通して現状把握を行った。(3)アジアにおける内発的地域振興のさまざまな事例を、国際的な研究者の交流のなかで多数収集するとともにその検討を行った。 とりわけ、上記(3)においては、近年のアジア諸国において展開されている内発的地域振興の事例ならびにその経験を、多数の研究者らが交換し合い、今後のあり方を検討する「アジアデザイン文化学会(ADCS: Asia Design Culture Society)」を、10月に中国南京市において成功裏に開催した。なお、同研究発表大会における論文発表数は128報にのぼり、BULLETIN OF ASIA DESIGN CULTURE SOCIETY, ISSUE No.10に所収されている。同シンポジウムへの参加者は、日本から約30名、中国から約90名、台湾から約20名、韓国から約10名、総計150名の参加をみた。
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