研究課題/領域番号 |
26350005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 あるの 京都大学, 理学研究科, 講師 (20467442)
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研究分担者 |
鈴木 克彦 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (10115983)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケープタウン / タウンシップ / 学生宿舎 / 寮 / コーサ族 / ズールー族 / マンチェスター大学 / ウィーン |
研究実績の概要 |
「アフリカとイギリスの学生の居住環境およびその空間理解について調査する」という今年度の研究計画に基づき、5月に南アフリカ・ケープタウン大学で4類型、9月にイギリスのマンチェスター大学で3類型、さらに11月にはオーストリアのウィーンにおいて民間業者の運営による3類型の学生宿舎を視察し、管理者への詳細な聞き取り調査を行った。 ケープタウン大学においいては、交換留学生などを対象とする短期滞在用宿舎のシェアハウス型とホテル型、留学生と現地学生を含む正規学生用の宿舎のうち伝統的な寮型と新しいアパートメント形の4つの類型について、それぞれの利用状況を観察し、管理者から意見を聞いた。さらに学生宿舎を管掌する部署の職員およびインターン大学院生を集めて意見・情報交換を行い、建物というハードウエアだけでなくサービスを含めたソフトウエアが重要であるという点について、文化的相違は無いことを確認した。 ケープタウンにおいては、学生宿舎だけでなく、アパルトヘイト時代の名残を残す黒人居住区(Township)を5つ訪問し、そこに経済格差が住居の差となって顕在しているにも拘らず多様な生活水準の人々が軋轢無く混住できている様子に驚いた。また近代化した生活の中にも脈々と続いている伝統的コーサ族の生活習慣を実地に見聞し、2014年に訪問したダーバンにおけるズールー族の近代化過程と比較することができた。またこの二都市間で、アパルトヘイト撤廃後の居人種間交流の度合いが極端に異なることも観察した。 マンチェスター大学においてはにおいては、大学が直接運営する築年数の浅い宿舎と古くからある建築デザイン的に問題をはらんだ宿舎、外部企業にアウトソーシングをしている最新設備の宿舎を見学し、学生の動向や生活習慣について担当者と情報交換をした。 ウィーンにおいては、民間のチェーンが経営する、社会人混住型も含む宿舎3物件を視察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では南アフリカとイギリスのみの予定であったが、EU圏の学生宿舎組織と連携がとれたため、急遽オーストリアも追加し、さらにヨーロッパ各国の宿舎運営担当者と情報交換をすることができた。海外出張が一度増え旅費が大幅に予算オーバーしたので、不足分は大学の運営費から補った。 南アフリカ・ケープタウン大学とイギリスのマンチェスター大学においては、担当の職員と関心が一致することがわかり、期待していた以上の深い議論ができた。引き続き研究連携をしていくことを約束し、その後も連絡をとりあっていることから、今後の進展に道筋をつけることができた。 ケープタウンにおいては、ダーバン訪問のときに達成し得なかったタウンシップの視察を、地元に人脈をもつ優秀な現地ガイドに巡り合えたおかげで、内部に深く入り込んで行い、外から見ただけではわからない人々のリアルな生活を垣間見ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は調査に大半の時間と経費を使ったので、次年度は、観察した内容を他の文献等に照らして確認し、さらに現地の人々に連絡をとって事実確認した上で、論文にまとめて発表する。 日本国内に視点を戻し、日本人の混住に対する意識調査も継続する。外国人の居住実態調査については、資金不足や個人情報へのアクセスの難しさにより進んでいないが、他大学で関心を同じくする研究者と連携が取れることになったので、引き続き挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施する予定であった日本人および日本在住の留学生の共生意識についてのアンケート調査ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
アンケート調査員への謝金として使用する
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