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2014 年度 実施状況報告書

19世紀英国における色彩論の成立・応用・伝播―官立デザイン学校を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 26350007
研究機関大阪大学

研究代表者

竹内 有子  大阪大学, 文学研究科, 助教 (80613984)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードデザイン教育 / 英国 / 色彩学 / 芸術文化交流
研究実績の概要

2014年度は、19 世紀英国の色彩論とその系譜、官立デザイン学校への影響関係に関する調査を行った。英国の化学者ジョージ・フィールドを中心に、室内装飾家のヘイ、フランスの化学者シュヴルールと同校の教師陣の著述を調べ、それらがいかに官立デザイン学校の教師陣に受容されたかについての道筋を検討した。
とりわけ先行研究において同校の教義に関連しては、フィールド『クロマトグラフィー』(1835 年)とシュヴルール『色彩の同時対比の法則』(パリ1839年)の二理論のみが言及されてきたが、1839年にフィールドが著した『類比哲学の概説』の1032節、1845年に増補された『クロマティックス』(三版)における「素描と色彩の類比」に関する記述が、「形態と色彩」の公教育を図る指導方針の形成に影響を与えた可能性があることが今回分かった。
また、同校の芸術総監督リチャード・レッドグレイヴが策定した教育カリキュラムおよび色彩教育の詳細を調査すべく、英国の国立芸術図書館で現地調査を行った。同図書館司書および王立美術大学(官立デザイン学校の後身)図書館担当者に、ロンドン本校のシラバスの所在について照会しつつ調査を進めたが、上記に係る同時代資料の多くが消失されており、カリキュラムの具体的な同定作業が困難なことが明らかになった。色彩教育については、レッドグレイヴの著したテキスト『色彩の基本入門書:教理問答集』および彼の講演の中に登場する色彩調和の法則を印刷した掛図(1853年、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館蔵)をもとに、フィールドに基づく一次色・二次色・三次色の成り立ち・色彩の調和的関係を導く割合と量、およびシュヴルールに基づくコントラストを主に教えようとしていたことが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現地調査では、レッドグレイヴが在任中の1850-70年代における官立デザイン学校のシラバスは発見できなかったものの、彼が意図した色彩教育の概要・目的を把握できた。このことについては、これまで全く先行研究がないため、今後のデザイン/色彩教育研究分野における基盤的研究となりうる。官立デザイン学校が構築したデザイン教育施策において、教授された色彩論の概要とその形成過程を明らかにできたことは、一定の成果である。

今後の研究の推進方策

官立デザイン学校のシラバスと教科内容については、ロンドン本校のみならず、地方校(シェフィールドやマンチェスター等)も視野に入れ、地方での現地調査を進める必要があることがわかった。またロイヤル・アカデミーにおける美術教育(素描を主とする教育)と同校のデザイン教育(素描/形態と色彩を一括して造形する教育)との比較に関する基礎調査を行ったが、後者の独自性をさらに明らかにするために、同校の色彩論の先鞭をつけたオーウェン・ジョーンズと実践者リチャード・レッドグレイヴの著述を精緻に分析し、その色彩論と色彩教育の意義を今後さらに詰めて考察していきたい。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、研究課題に関する多数の文献を寄贈頂いたため、予定していた物品費用から差異が生じた。そのお蔭により、一次資料であるジョージ・フィールドの著作と、色彩学関連の重要な二次資料をかなり入手することができた。

次年度使用額の使用計画

次年度は、今年度に現地調査が及ばなかった範囲を再試行するために、海外調査を予定しており、旅費として使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 19 世紀英国のデザイン教育における色彩論の形成過程―官立デザイン学校を中心に2015

    • 著者名/発表者名
      竹内有子
    • 学会等名
      意匠学会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都市)
    • 年月日
      2015-02-14
  • [備考] 第221回意匠学会研究例会 発表要旨

    • URL

      http://japansocietyofdesign.com/meeting/yoshi221.html

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公開日: 2016-05-27  

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