研究課題
今年度は、英国の官立デザイン学校の教育システム、ジョージ・フィールド、同校関係者の色彩論がデザイン製品にどのように適用されたかにについて、クリストファー・ドレッサーを事例に調査を行った。方法としては、国立文書館で閲覧可能な、著作権登録がされたドレッサーのファブリック(60点)・壁紙(46点)資料に基づき、これらのデザインに用いられている色彩と彼の色彩論との整合性を考察することを試みた。当初、ドレッサーの色彩論がとりわけ何の製品に向けられたのか(あるいはデザイン全般のものなのか)特定する必要性を感じ、彼の『装飾デザインの諸原理』(1873年)のほか、『デザイン研究』(1876年)を手掛かりにした。前書に記された色彩論では、インドのテキスタイルを最も優れた例証とし、中国と日本の手工芸品を良例に挙げる。後書には室内インテリアに関して、フィールドに基づく色彩を提案する記述と彼のデザイン画がある。しかし彼の理論がどのデザイン製品に適用されたかについて触れた先行研究はこれまで殆どない。ミントン・アーカイヴ所蔵の1870年代とされるドレッサーの陶磁器用デザイン画を閲覧した折、色彩論の反映と思われる数点の色付けスケッチを発見した。だが今回の調査で、1860-70年代の絹ダマスク織製品に、彼の主張する色彩論が顕著に表れた例を見ることができた。よって現段階で参照できた限りの範囲でいえば、平面デザイン(テキスタイル製品)に色彩論が積極的に適用された事実は、当時の市場において需要の高さにも拘らず海外輸入に頼っていた「絹製品における色彩」と「そのデザイン教育」の重要性を示している。このことはまた、従来のドレッサー研究において、立体製品(金属器・陶磁器)に比べて注目されることが少ない、平面製品に対する調査のさらなる必要性をも示す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Proceedings of the ICDHS 2016 - the 10th International Conference of Design History & Design Studies, Making Trans/national Contemporary Design History
巻: ― ページ: pp.218-222
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