研究課題/領域番号 |
26350009
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
岡本 幾子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00135766)
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研究分担者 |
小林 政司 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (60225539)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アクセシブルデザイン / 生活環境 / 生活情報 / ユーザーインターフェース |
研究実績の概要 |
アクセシブルデザインは“より多くの人が使いやすい”ことを目的としている.本研究では,「人は色や形などの視覚情報とどのように関わっているか」を念頭に置き,生活環境における具体的な事例を対象としたアクセシブルデザインの有効性について検討している. H27年度は,国内における繊維製品の「取り扱い絵表示」の意味伝達効果を検討した.「取り扱い絵表示」は家庭用品品質表示法および繊維製品品質表示規程により,日本工業規格(JIS)で規定されているが,平成28年12月1日から国際標準化機構ISO 3758との整合化のために,JIS L0217からJIS L0001への切り替えが予定されている.これまで慣れ親しんできた取り扱い表示記号が変わることで,記号を表示する事業者やそれを利用する生活者の混乱が懸念される.そこで「取り扱い絵表示」のカラー化による改善を試みた. JIS安全色(JIS Z 9101)の中から赤紫を除く7色に関して,カラーイメージ調査により,各色のイメージ(冷温,強弱,乾湿,明暗,可否など)を明らかにし,その結果に基づき記号のカラー化を行った.さらに,カラー記号の意味伝達効果について,パーソナルコンピュータを刺激表示装置として用いた順位付け法により検討した.その結果,温度に関してはカラー化の効果が認められる一方で,強弱に関してはその効果が小さいことなどが示唆された. このような記号と意味との連結作業は,脳の活動にも影響しているのではないかと考え,脳の活動に対する負荷がより小さいものが優れた意味伝達効果を有していると仮説を立てた.現在,記号のカラー化による意味伝達効果を明らかにするため,今年度購入した携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置(NIRS:near-infrared spectroscopy)を用いて,脳活動への負荷が適度な,記号と意味との連結作業の探索を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(H26年度)は,生活情報のうち,通信機器において文章表現の一部を代替するモバイル絵文字を対象としたアクセシブルデザインの検証を行った.H27年度は, JISと国際標準化機構ISO 3758との整合化のため,平成28年12月1日よりJIS L0217からJIS L0001への切り替えが予定されている,国内における繊維製品の「取り扱い絵表示」に関して,“より多くの人が使いやすい”というアクセシブルデザインの目的に沿って,カラー化による改善を試みた.記号と意味との連結作業は,脳の活動にも影響すると考えられ,意味伝達を両者の連結作業ととらえた場合,脳の活動に対する負荷のより小さいものが優れた意味伝達効果を有していると予想されることから,現在,今年度購入した携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置(NIRS)を用いて,カラー化による意味伝達への効果について,脳科学的な視点からの裏付けを行うため,脳活動への負荷が適度な,記号と意味との連結作業の探索中であり,H27年度,H28年度の研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
JISの規定と国際標準化機構ISO 3758との整合化のために, JIS L0217からJIS L0001への切り替えが予定されている,国内における繊維製品の「取り扱い絵表示」に関して,カラー化した記号の意味伝達効果を検証するため,引き続き近赤外線組織酸素モニタ装置により脳活動データを採取するとともに,H27~H28年度に実施した実験ならびに調査(ユーザーインターフェースやアクセスルートなどの意味伝達効果の検証)などの補完を進め,最終年度の実績報告書を作成する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は,カラーイメージ(冷温,強弱,乾湿,明暗,可否など)を明らかにしたうえで,パーソナルコンピュータを刺激表示装置として用いた順位付け法により,国内における繊維製品の「取り扱い絵表示」の意味伝達効果の検証を進めた.その結果から,脳の活動に対する負荷がより小さいものが優れた意味伝達効果を有していると仮説を立て,今年度,携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置(NIRS:near-infrared spectroscopy)を購入し,脳活動への負荷が適度な,記号と意味との連結作業の探索を進めている. NIRS(携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置)は,導入時にオプションならびに消耗品の購入を控え,購入価格を最小限に抑えて実験をスタートさせたことと,予備実験段階で実験協力者への謝金等が発生していないことから予算の一部を次年度に繰り越しとした.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の研究費の主な用途として,今年度導入した携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置(NIRS)の消耗品(測定プローブ,両面粘着シートなど)やオプション(外部入出力対応モジュール,専用のデータ解析ソフトなど)の購入を予定するとともに,実験協力者への謝金などを予定している.
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