研究課題/領域番号 |
26350012
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鶴野 玲治 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (10197775)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンピュータグラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究では流れる水や煙のような美しい流体の形状をCG(コンピュータグラフィックス)でリアリスティックかつ自由に生成し、さらに任意に制御や編集加工できるようなモデルを構築することを目的としている。CG で液体の挙動を扱う際、正確さやリアリティを追究するには計算時間が犠牲となり、計算速度やインタラクティビティを求める時には正確さが犠牲になる。言い換えればコンピュータの計算量の制約の中でどこまで表現力を上げられるかという課題に対する取り組みになる。これをバランスよく解決するために、流体計算方法だけでなく精度や計算対象の効率化が必要であり、また、思考イメージを直感的に反映させるようなユーザーインタフェースの開発が必要になる。 平成26年度はこれまで3年間継続してきた科研費基盤C研究「編集能な流体造形モデル」の成果を引き継ぐ形でスタートした。リアリティを向上させるために、流体を大量の粒子で近似し、流体空間と圧力計算は格子法で計算する。この方法は流体のそれぞれの利点を持ったもので再現性を維持したままで意図的に制御するという考えに適したものである。編集加工については、流体を直接制御するとリアリティが損なわれるため、流体を支配する物理法則や空間の性質自体を間接的に編集加工することを試行した。具体的には引力を持った制御粒子を用いた制御であり、シェイプマッチングと非流体計算による自律変移を試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はアダプティブな流体近似モデルの改良を行った。流体空間を立方体格子でなく可変多面体格子として考え、さらに流体を格子と粒子のハイブリッドモデルとして適宜粒子の増減制御を行い界面の微細形状の表現の改良を行った。粒子の移動に適応した空間密度格子を与えることで大幅な計算量の軽減を実現しながら粒子間の連続性(糸状や膜状の広がり)にも対応できた。 制御系・操作系では、目的形状、ポテンシャル場、粒子影響力などをインタラクティブに制御する対象とした。流体計算は空間で行われるため、流体の存在する空間や時系列の外形形状を与える方法をさぐった。ターゲット(ある瞬間の全体形状や分布)を空間(ボリューム)や形状(シェイプ)としてデータ化し、第一段階として特に固体や弾性体に対して適応されるシェイプマッチング法を試行した。流体を構成する粒子に加え、形状をガイドする制御粒子(コントロールパーティクル)を定義し、ナビエストークス方程式の外力項として目的形状への引力を与えた。これによって任意の形状に近づけることには成功した。目的形状の与え方や、引力が作用している間の形状変化の違和感の解決などが次の課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
前年までに確立した流体場の計算方法をさらに進め、また想定する流体のスケールに合わせた計算モデルの適正化も考慮する。たとえば大洋波レベルの大きさになると関数の重ね合わせによってある程度のリアリティが出せるため、必ずしもナビエストークス方程式に依存する必要がなくなる。また、水でなく重力の影響が小さい気体の流れ、たとえば煙の動きにも対応させる。現在二次元的な計算までは実現できている。しかし水と異なり界面が不明確であるためレンダリングの方法に課題が予想される。 制御系、操作系ではターゲット空間や形状の入力方法の多様化をはかる。ターゲット空間や形状が既に与えられていれば、これに近づける動きを水粒子に加えてその補間方法を探ればよい。ただし対象の流体場は静的には3Dであるが、実効的には時系列変化を加えた3D(4D)である必要から、このデータを人が逐一詳細に与えるのは操作量が大きくなり、必ずしも現実的ではない。そこで全体的な概形と微細構造とを同時に取得し入力する取得方法としてイメージベースドモデリング、あるいはスケッチベースインタフェース手法の可能性を探る。離散的になるため、サンプル点や線から全体を補間する必要がある。ストロークからの流れ場や重力場の生成、複数画像からの重力場の生成などが考えられる。また同時に、流体を間接的に制御する、という考え方から、必ずしも流体とは限らず、一見無関係な2Dイメージから3Dオブジェクトを生成する際に必要となるデータの補完方法の調査と開発を進める。その後、計算系、操作編集系ともにリアルタイム、インタラクティブなものに発展させる。計算効率の向上に加え、並列化・ハードウエア化、データ削減などを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算に使用しているコンピュータの性能を向上させるための部品(CPUとグラフィックボード、計約90,000円)を購入予定であったが、その時点での残額(6,644円)が不足していた。幸い繰り越し可能な予算であったため、翌年の額の交付を待って合算して購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の科研費が交付されたため、前年の残額(6,644円)を合算してコンピュータのCPUとグラフィックボード(計約90,000円)の購入手続きを行った。
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