本研究では流れる水や煙のような自然界に見られる美しい流体造形をコンピュータグラフィックスで描きだし、任意に制御、編集、加工ができるようなモデルの構築を目指している。計算の精密化によるリアリティと制御編集加工のためのインタラクティビティとは相反する課題であり、双方の改良とバランスが重要になる。モデリングインタフェースの問題は後者の問題であるが、前者の計算効率化による効果は大きい。 平成28年度は計算系、操作編集系ともにリアルタイム・インタラクティブなものに発展させるため、引き続き計算効率の向上、並列化、ハードウエア化、データ削減を試みた。これまでの方法に加え、2013年に発表されたPosition Based Fluid(位置ベース流体シミュレーション手法)を採用した。この手法は精細にモデリングされた流体を高速に計算することが可能である。この方法では流体の非圧縮性を密度に関する制約として与え、制約を満たすように粒子の位置を直接移動する。この手法は高速で安定した計算が可能であるが、制約を満たすためには反復計算を行う必要があるためリアルタイムアプリケーションでは計算コストの面で問題となる。この問題に対し、密度の制約を補完するために局所密度補完モデルを設定することで少ない反復計算回数でも非圧縮性を保つ手法を提案した。さらにGPUでの計算の並列化を加えて実験を行った。この結果、従来の手法よりも密度の安定化が可能であり、少ない計算コストでほぼリアルタイムの計算によって非圧縮性の実現が可能となることが確認できた。
|