本年度は①これまで検討した空撮用赤外線カメラを小型無人飛行機に搭載し、研究対象としてきた新興住宅地の上空から、今まで捉えることが難しい画像である住戸熱(屋根面や住戸壁面部分)が雪堆積形成にどのような影響を与えているのかを調査した。さらに、今年度は小型無人飛行機のパイロットによる手動操縦ではなく、②「飛行ルートプログラム」を用いてより精度に高い画像を捉える手法を試みた。具体的な結果は以下の通りである。 ①の調査では、午後19時の外気温が-7.8度の日射の影響を受けない時間に実施した。その結果、多くの住戸屋根面の温度は-9~-16度程度の範囲であり、屋根面の積雪深さは住戸からの熱よりも日射による積雪減少が大きく、その差異によって落雪する量が住戸周辺の雪堆積形成に大きな影響を与えていることが判明した。一方で壁面の温度は屋根面よりも高い温度でほとんどの住戸が-7~-10度の範囲であることが明らかとなった。この結果住戸壁面の熱が住戸周辺の雪堆積形成に大きな影響を与えているとは考えにくい結果となった。また、住戸周辺の雪堆積形成部分の温度では、土盛り部分に雪が堆積した部分は通常の積雪部分の温度と同等の温度となった。 ②の調査では、日中の画像データから三次元アプリケーションを用いて3D画像を作成することに成功した。これまで建築物の3D化をした研究では単体の建物を対象とした研究である。しかし本研究で捉えた住宅地全体を3D化することで今まで見えなかった部分を再現することが可能になる。この3D画像を分析すると、自然に発生する住戸周辺の雪堆積形成は屋根からの落雪した雪が大きな影響を与えていることが明らかとなった。また、風雪による影響もあり街区内部の雪堆積形成(吹きだまり)は住戸間の間隔が狭い部分の後(解放された部分)や屋根からの落雪した部分などの障害物に堆積する部分が多いことが明らかとなった。
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