本研究は、今後タイ国をはじめとする中心国でニーズが高まると考えられる産業デザイン人材について、その育成プログラムを検討しようとしたものである。研究開始当初は、前年度までの研究を引き継いで産業デザイン人材の定義について検討を重ねたが、企画力、デザイン力を高めることを中心とした産業デザイン人材の育成モデルが定義され、その後のタイ国内における大学での実証実験にスムーズに移行することができた。実証実験に関しては、研究計画段階で日本のODA支援によって推進されているタイ自動車人材インスティチュートプロジェクト(TAHRDIP)で運営されていたR&D人材育成のコースでの導入を企画していたが、担当者の意向や担当専門家のカリキュラム運営方針などに融合させることが難しく、変更する結果となった。しかし、その後の交渉の結果、カセサート大学工学部において本研究の成果の一つである産業デザイン人材育成プログラム(商品企画領域)の導入実験の機会を獲得し、2タームに渡ってカリキュラムをテストする機会を得られた。その結果、人材育成モデルを現地の実情や人材の水準によってどのようにローカライズするべきかという知見を得る機会を得られた。 また、産業デザイン人材が牽引する新たな産業部門として期待されるクリエイティブ産業政策についても並行して検討することができた。政策面では、タイ国の取り組みのみならず、日本におけるクールジャパン政策、在外研究中に滞在したオーストラリアのデザイン政策についても検討できた。クリエイティブ産業政策の研究いついては、人材育成という面のみならず、政策の成功要因となる地域資源との関係性の解明、地域経済への波及効果、ということについて分析した。
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