研究課題/領域番号 |
26350020
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
藤野 靖子 京都市立芸術大学, 美術学部, 准教授 (50363966)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デザイン教育 / 織物技術 / テキスタイル産業 / マッチング |
研究実績の概要 |
本研究は、テキスタイル産業の再生と国際競争力の獲得に不可欠な、生産現場での自立したモノづくりを実現するための新たなデザイナー「テキスタイルモデリスト」の育成に向けた研究である。このような新たな価値創造を持って生産を実現するデザイナーの育成を可能にするために、どのような教育プログラムが必要か?さらにはどういった教材やツールがテキスタイル業界に有効であるかを実践的に試行、検証しつつその成立を目指すものである。 平成26年度は当初の計画通り、A:Contents,B:Case Study,C:Researchという3つのプロセスで研究を進めた。 A:Contentsにおいては、まず複雑な織物構造を分かりやすく伝達するための手法の探求を行った。さらに糸素材に関しては、その加工に焦点をしぼり、金銀糸、箔糸、などの撚糸に関する技術と、その機器やシステムの可能性を調査した。糸を作る工程には、まだまだ多くの可能性があり、問題は、特殊な意匠を持った糸が現在の製織システムの制約の中ではなかなか取り入れることが困難で、分業の体制も含めてデザイナー教育に関してもその問題点が明らかになった。B:Case Studyの研究では、その問題点から、製織不可能な意匠の糸をどのように製織システムにのせるか。また、製織可能な糸素材の意匠の可能性とは何か。の2つの視点から、いくつかのプロセスを一連の教育プログラムとして試行した。C:Reserchにおいては、Aの研究に必要な、これまでどのように技術伝達がなされてきたか。もっとも原初的な方法ともいえる、手書きのメモや挿絵等によるものと、先端的な3D画像解析など幅広くその可能性、優位性を比較するために資料の収集を行った。また、生産システムの情報収集のために、現場の調査として織物の多くの工程に関する工場の視察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、織物の組織構造や、その製織システムをどのように分かりやすく伝達すれば良いか、というテーマに関してはかなり様々な具体的可能性を確認できた。特に『TextileManufacturing Guides」の内容やその発信方法において、新たな可能性ある具体的な手法を見いだせたのが収穫であったと考える。さらに、糸素材とテキスタイル開発という分業で見失いがちな2つの工程の連携をはかることで、新たな製品開発を可能にした一連の教育プログラムの試行は、以後の研究に具体的な指針与えるものとして評価できる。また、京都市産業技術研究所との連携もかなり効果的、多角的に実現できており、今後の研究体制も万全であるといえる。しかしながら、各素材に特化した技術の原理を、現地調査により抽出し、次年度のマッチング促進するためのデータベースを作るという研究に関しては、当初想定していたより遥かに多くの特徴的な技法が存在しており、調査と分析にもう少し時間が必要であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度研究を継続して発展させるために、糸素材の開発という工程から製織までの一連の教育プログラムを新たに試行し、問題点の抽出をおこなう。特にマッチングという視点を意識し、織物生産の可能性を広げ、その実現への具体策を実践的に研究する。さらに、昨年度の糸の加工の他に、織物の仕上げ加工という工程にも焦点をあてて、調査と分析を行い、その情報収集とデータ化の方法を探る。特に一宮市の羊毛に特化した仕上げ技術を、合成繊維や他の天然繊維と組み合わせ、新たな加工の可能性を実験するプログラムや、縮絨や起毛等の技術に関する機器やシステムを調査し、マッチングを誘発するデータとしての蓄積を図る。昨年度に知見を得た、織物の組織構造における解りやすい伝達手法を具体化し、テキスタイルモデリスト育成に不可欠なテキストとしての発信を試行し、そのフォーマット、内容等を検証する。さらに次年度の研究最終年に向けて、「TextileManufacturing Guides」の具現化に向けたフォーマットの充実や、テキスト発信の具体的な試行を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な海外研修が、当初の予定であった3月末から、翌年度の4月に変更になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
外国旅費として既に使用済みです。
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